4月2日から本日まで、「『ビジネスと人権』の前進」というタイトルで、4回連載されていた。「資本主義の現在と未来」を探るシリーズの一環らしい。「赤旗」のインタビューに答えているのは筒井春彦さん(労働者教育協会理事)。私が全学連で国際部長をしていたとき、副部長として支えてくれた有能な人で、その後もずっと、こういう労働問題の国際基準に関心をもって仕事をしてきた。その衰えない意欲に頭が下がる。

 

 さて、「ビジネスと人権」というようなタイトルを「赤旗」が立てると、企業は労働者の人権に冷酷だという告発でもしているのかと思いがちだが、この連載は異なる。タイトルが「前進」となっていることでも、連載最終日の見出しが画像にあるように「日本政府・企業も動かす」となっていることからもわかるように、わが日本政府やわが日本の大企業も前向きな動きをしていることを紹介しているのである(もちろん、問題点の指摘も欠かしていないが)。

 

 記事中の画像は、日本政府が策定した「ビジネスと人権に関する行動計画」のパンフで、そこには「誰一人取り残されない社会に向けて──企業に求められる人権尊重の取り組み」と書かれている。市民団体のパンフレットを見ているようだ。

 

 本日の記事では、経団連の「企業行動憲章」(2017年)、トヨタの「トヨタ自動車人権方針」(2021年)などが肯定的に取り上げられている。トヨタの方針はこうなっているらしい。

 

「私たちは、性別、年齢、国籍、人種、民族、信条、宗教、性的指向、性自認、障がい、配偶者や子の有無等を含むいかなる理由の差別を認めません」

「セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、同調圧力等あらゆる形態のハラスメントや、個人の尊厳を傷つける行為を認めません」

 

 実際問題、企業においては、例えばセクハラやパワハラ1つとってみても、20世紀とはまったく対応が異なっている。もちろん、ダメダメ企業は存在する。宝塚歌劇団がその代表で、パワハラが指摘されても、長い間、「指導であってパワハラではない」とか「内部のことが外部漏らしされている」とか、どこかで聞かされたような言葉を発して逃げ続けてきた。でも、その宝塚もパワハラを認めて謝罪したように、すでに企業の世界においては、それでは許されなくなっているわけである。

 

 この「赤旗」連載は、なぜそういう変化が起きたのかを、20世紀との比較で(その20世紀のことが、われわれの常識として染みついている)解き明かしている。一読を勧めたい。(続)