昨日書いたように、市民連合は12月7日、野党共闘は安保政策がバラバラという批判に応え、「核抑止抜きをめざす専守防衛」のような共通政策を提示した。私の「核抑止抜きの専守防衛」より、少し立憲民主党寄りである。当然であろう。

 

 その翌日の「赤旗」。これを1面で取り上げ(画像)、「総選挙へ野党共通政策」「共闘再構築へ 大きなステップ」と報じている。これも当然だろう。

 

 

 ところがこの記事のどこを見ても、専守防衛が野党の共通政策として提示されたという中身が書かれていない。そこで、2面に共通政策の要旨が載っているというので、それを見てみた。

 

 これが「要旨」である(画像)。びっくりした。市民連合の要望書のうち、「核抑止抜きをめざす専守防衛」を意味する以下の部分が、すっぽりと削られている。

 

 

「日本国憲法が掲げる平和的生存権の理念に立脚した平和外交と専守防衛の安全保障政策に徹することこそ、危険かつ不毛な防衛費増大・軍拡競争とその行き着く果ての戦争を回避し、真の意味で、国民の生命、自由及び幸福追求権を守ることができる。……非核三原則の遵守など、核兵器廃絶めざして、努力する。」

 

 要旨として掲載されているのは、政策というより、「これに反対する」という以下の部分だけである。反対運動のスローガンのような部分だけだ。

「憲法9条の改悪や専守防衛を逸脱する集団的自衛権の行使・敵基地攻撃能力の保有を容認せず、辺野古新基地建設等基地の強化ではなく、基地負担を軽減する。」 

 

 「専守防衛」は本来なら政策として一致点になるはずだった。だって志位氏は、2022年4月8日(金)、参議院選挙勝利・全国総決起集会でこう報告している。

 

「わが党は、綱領で、憲法9条の完全実施に向けて、国民多数の合意で、自衛隊問題を段階的に解決していく方針を明確にしています。その重要な第一歩は、安保法制を廃止して、海外派兵の自衛隊を、文字通りの専守防衛を任務とする自衛隊に改革することにあります。」

 

 これは共産党が「専守防衛」を肯定的な文脈で捉えた歴史上最初の発言である。私がどんなうれしい気持になったか、理解していただけるだろうか。この線が維持できるなら、市民連合の要望書は、そのまま受け入れ、紹介できるものである。野党の共通政策として、堂々と政権共闘のために邁進できたのである。

 

 ところがご存じのように、私の除名をきっかけに、「専守防衛」は憲法違反だとされた。「赤旗」編集局次長の藤田健氏は、当時、私の「核抑止抜きの専守防衛」論をとりあげ、「『専守防衛』とは、自衛隊合憲論を前提とした議論」だと切って捨てたのである。「専守防衛」を全否定した「赤旗」が、「専守防衛」を共産党を含む野党の共通政策にしてほしいと市民連合から要望されても、記事にできるはずがない。

 

 いま、共産党に問われているのは、以下のどちらかの立場である。1つは、私を除名した立場を変更することなく、市民連合の要望を拒否し、安全保障政策がバラバラだとの批判に応えず、野党の政権共闘の可能性を閉ざす道である。今回の大会決議案で「政権共闘」という言葉が使われていないのには、この道を進もうという意図があるのかもしれない。

 

 しかしもう1つは、専守防衛を政策的な任務と位置づけた22年の志位発言の線まで立ち戻り、野党の政権共闘による「変革の力」をつくりだす道である。後者の場合、専守防衛を主張して綱領違反だとして除名された私をどうするのかが、必然的に問われてくるのだけれども。(了)

 

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