中祖寅一様

 

 いよいよ最後のメールです。一か月以上にわたってお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

 さて、あなたと「赤旗」政治部が、篠原氏の第二事務に関する無責任な暴露記事になぜ反論できないのかです。その理由がずっと分からないでいました。

 

 篠原氏の記事の影響は絶大です。この間、私の除名問題で意見を伺うため、何人かの知識人とお会いすることがありましたが、多くの人は、私と会えば第二事務が尾行しているかもしれず、そうなると私との関係が党中央に伝わることになるからとして、非常に慎重な態度をとっておられました。私自身は、この連載で書いてきたように、第二事務=尾行機関説を信じていないので、篠原氏の記事の影響力にはとてもびっくりしました。

 

 それはそれとして、私が篠原氏の記事に対する批判を、あなたと結びつけて書いているのを見て、その篠原氏から久しぶりにメールが来ました。この連載の途中で書いたように、篠原氏が自由党の国会議員の秘書をしていた頃、私が事務局長をしている「自衛隊を活かす会」の2017年のイベントの必要上(共産党も参加したイベントです)、篠原氏とお会いしたことがあったのですが、それ以来のことです。

 

 篠原氏によると、あなたが北海道大学に入学する前、民青同盟豊島地区の大学浪人班にいた頃、篠原氏は地区の常任委員をしており、そこで最初の出会いがあったそうですね。その篠原氏は、党を除籍されたあとも自由党の国会議員秘書をしていたことでも分かるように、ずっと政治の世界とは密接に生きてきたようです。そして、2011年の3.11の直後は、当時、政権の座にあった民主党に食い込んでいたらしいです。

 

 その篠原氏が、民主党の政調の会議に参加したとき、その会議にあなたも参加していたので、とってもびっくりしたということでした。もちろんあなたは「赤旗」の記者で、その身分を隠して潜行取材していたわけです。政調の会議というのは、議員である正規のメンバーだけでなく、その議員の秘書も参加することがあり、すべての秘書の顔が分かるわけではありませんので、それを利用して忍び込んだのでしょうね。

 

 しかし当時の民主党は、とりわけ政調は、原発対応で混乱して修羅場の様相を呈しており、秘密の漏洩は許されるものではなかったそうです。当然、「赤旗」の記者が許可も得ずに聞いていたことは、民主党内で大きな問題となった。

 

 新聞記者としては、見上げた根性というか、立派な心構えだと言えるかもしれません。けれども、もし他党の機関紙の記者が共産党の内部の会議に忍び込んで情報を入手していたとしたら、共産党がどう反応してどういう制裁をくだしたかを想像しただけでも、法律に触れるかどうかは知りませんが、あなたがとんでもないことをしでかしたことは確かです。

 

 しかし篠原氏は、その一件をもみ消してあげたそうですね。あなとの浪人時代以来の関係があったので、それに免じて許してほしいと小沢一郎氏に願い出て、それが許されたというわけです。まだ政治部長になる前で、出世の階段を上ろうとしていたあなたには、どんなに感謝してもしきれない出来事だったことでしょう。

 

 共産党の第二事務がこれほどの批判にさらされ、それへの反撃が求められているなかで、反撃しているのは私だけで、あなたや「赤旗」政治部は黙り込んでいる。その理由がどこにあるのか、篠原氏に恩義を感じて筆がにぶっているのか、直接に尋ねたわけでもないので、私には分かりません。

 

 けれども、篠原氏とのそういう関係があることが本人から指摘されているのですから、違うというなら、はやく身の潔白を証明したほうがいいでしょう。いや篠原氏の言う通りだというなら、何らかのケジメをつけるべきでしょう。

 

 ことは、あなただけの問題ではありません。「真実を報道する『赤旗』」というスローガンの通り、何の忖度もせずに権力や反共勢力と戦う記事を書けるのかという、これからの「赤旗」政治記事の信頼性にかかわる問題なのですから。(了)