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中祖寅一様

 メールが一か月にも及んでいるので、もうお忘れかもしれませんが、このメールを書き始めたのは、あなたが9中総で私と権力の結託に関して発言したからです。それが小池氏の以下の結語にも取り上げられ、個人の発言ではなく、中央委員会の決定になりました。

 

「『しんぶん』の中祖寅一政治部長は、いまの党攻撃が、権力、メディアと一体となった大掛かりな党攻撃であることをリアルに示しました。全体像が非常に深まったのではないでしょうか。」

 

 この時点では私の名前はでていませんでしたが、ここで「権力、メディアと一体となった大掛かりな党攻撃」をしかけているのが私だということは、あなたが直後の「赤旗」幹部記者会議(10月10日)で9中総での発言を説明するかたちで述べました。あなたの発言の全体を紹介しましょう。

 

「2月9日の夜、大手紙関係者と懇談。『松竹氏が私を取り上げてほしいと言ってきた。各社に行っているようだ』。……

 松竹氏はメディアに働きかけ、大手メディアが対応し、松竹氏の主張に追随してきたのが実態だ。朝日はウェブ論座で3回も松竹氏を取り上げた。

 年初のタイミング、統一地方選前を選んでいたのは、松竹氏とメディアだ。この時期が効果的だとメディアが判断した。

 なぜメディアが松竹氏の後押しに動いたのか。それは、松竹氏の主張が支配層にとって歓迎すべきものだからだ。安保政策の変更、党首公選制、民主集中制の放棄など干渉的攻撃と一致するものだ。

 とくに2021年の総選挙後、野党共闘は崩壊したとし、日本共産党への攻撃を強めてきた。支配層やメディアは松竹氏を使えると考えたのだと思う。……

 今起きていることは、支配階級の大掛かりな攻撃だということを認めて、正面からたたかうことが必要だ。」

 

 この発言を聞いて、私は率直に言えば、ホッとしたところがあります。私が権力、支配層と結託して党攻撃をしているというのが、現在の党中央の主張ですが、そう言いながら、実際にはその「権力」なるものがどこにも登場していないからです。権力と結託していると強調するのだから、公安調査庁とか警察権力とかの名前が出て来るのかと思ったら、出てくるのはメディアだけであり、権力機構は何一つでてきません。そんな関係など存在しないのですから、出てこないのは当然なのですが、権力との関係がでっち上げられなかったことには、やはり安心はしたのです。

 

 一方、それならなぜ、あなたや党中央は「権力」という言葉をあれほど強調するのでしょうか。この間の党勢の後退の原因について、みずからの指導や路線の問題だと明らかにするのがイヤなので、権力から攻撃されているとでも弁明して党員に理解してもらうしかないという事情はあるでしょう。

 

 しかし同時に、あなたの発言を見れば分かるように、あなたや党中央にとって見れば、メディアそれ自体が「権力」と同一視されているようでもあります。あなたは両者を区別して使っておらず、区別していたとしても、せいぜい、メディアというのは支配層の思惑に沿って記事を書くところであると認識しているのです。

 

 その見地に立ってしまえば、私が『シン・日本共産党宣言』刊行の一か月ほど前から、この本について取り上げてほしいとメディアにお願いしたのは事実なので、メディアに働きかけたこと自体が権力に働きかけたことと同じだという理屈になってしまうのでしょう。あなたや「赤旗」政治部、党中央にとって、いまや「メディア=権力、支配階級」となっているということです。そういう認識から、現在の党の方針は組み立てられている。

 

 実際、私の除名直後、志位氏が記者会見で除名を批判した「朝日新聞」の社説を取り上げ、「党攻撃」だと批判しました。「あまりに不見識です。日本共産党の自主的・自律的な決定に対する外部からの攻撃です」というのが、志位氏が述べたことでした。「朝日」などのメディアも権力と一体になって党攻撃をおこなっているというのが、現在の党中央の認識です。

 

 それは間違った認識だと思いますが、あなたや党中央がそう認識するなら、それはそれで構いません。しかし、それを前提とするなら、じつは、あなたの9中総と「赤旗」記者会議での発言は(従ってその発言を党の公式方針とした9中総決定は)、じつは、あなたと権力との深い結びつきから生まれたものだと言わざるを得ません。どういうことかは、明日に回します。(続)