中祖寅一様
ご存じのように、第二事務が担う防衛の仕事は、幹部防衛だけではありません。私が共産党の職員になって教育された時点では、3つの分野があるとされていました。幹部防衛、事務所防衛、集会防衛です。
この内、幹部防衛がもっとも大事な仕事だとされますが、それについてはこの連載のテーマとも関わるので、あとでふれます。まず事務所防衛と集会防衛について書いておきましょう。
事務所防衛については説明しなくても分かるでしょう。共産党の中央委員会、都道府県委員会、地区委員会の事務所を防衛することです。そこには党員や「赤旗」読者の名簿などもあるので盗みに入られては困りますし、放火などされては財産も失うことになります。ですから、人が寝静まる夜も、ローテーションを組んで泊まり込んだりするわけです。私も中央委員会にいたときはそうだした。昼間も受付で訪問客の対応をしていますが、これも防衛任務も兼ねています。
ただし、篠原氏が書いているのとは違って、現在、この仕事は第二事務の任務ではなくなっています。合同警備という別会社が中央委員会の建物を含めすべてを取り仕切っているのです。共産党員の数も減って党専従のなり手も少なくなっているのに、第二事務が主に担う幹部防衛の対象である幹部の数は多いままです。その結果、第二事務の負担が過重になっているのが現実ですから、それを減らそうという判断もあったのではないでしょうか。
集会防衛について篠原氏は触れていませんが、重要な仕事です。幹部の演説会などの際、ただ幹部を防衛するだけではなく、演説会そのものが右翼などに襲撃されないよう、その動向をチェックすることなどが必要になります。幹部防衛それ自体についてみても、社会党の浅沼委員長が襲われて死亡した教訓があり、会場の前列などには信頼できる人を集めて置かねばなりまさえん。だから、演説会などがあると、私のような勤務員にも招集がかかり、「前列防衛をよろしく」と依頼されるわけです。
この集会防衛についても、第二事務の仕事は以前ほど多くはありません。なぜなら昔のように「人民大学」「赤旗まつり」などが開催されなくなったからです。右翼による襲撃事件も少なくなっていることも関係しています。
人民大学とは、70年代から80年代にかけて、共産党幹部が党員を対象にしていろいろ講義するための集会で、夏休みなどの期間に一週間ほどをかけて実施されていました。地方の有名な温泉などで開かれるので、学習と保養を兼ねて楽しみにしていた党員もいたでしょう。
これは右翼にとっても存在意義を示す絶好の機会で、日本全国から宣伝カーを連ねてやってきました。1000人ほどの党員が集まる場が混乱してはいけないので、人民大学の開催が決まると、第二事務は警察庁に挨拶をした上で現地の県警に出向き、いろいろ打合せをします。現地の警察にとっても右翼対策を堂々と実施できる絶好の機会なので（それを名目に警察庁から予算もぶんどれるし、県内各地の警察官の訓練にもなる）、協力的な体制を敷いてくれるのでした。
当初は現地の温泉街なども協力してくれていましたが、温泉ブームもあってか各地が自力で賑わうようになるとともに、右翼による迷惑度合いがどんどん進行し、共産党が来ることが必ずしも歓迎されなくなって、次第に人民大学も廃れていきます。この点でも、第二事務の仕事は少なくなり、人員減に対応できるようにもなっていきました。（続）