〈昨夜は東京で、若い学生が主催した「青少年のためのシン・松竹伸幸入門」でした。ズームでは同時中継されましたが、近く、同じものを私のYouTubeチャンネルで見られるようにしますので、お楽しみに。明日も東京から、明後日は福島からライブ中継があります。ブログの下欄で紹介していますので、よろしく。じつは、明明後日の午後2時半からもライブがあるのですが、その告知はしばらくお待ちください。〉
中祖寅一様
さて、いよいよ第二事務の仕事です。前回、第二事務の人が書記局長について回っていると紹介したことからも分かるように、幹部を防衛するのが基本的な仕事です。篠原氏も「本来の任務は、党最高指導部のボディガードであり、右翼のテロなどからこれらの幹部の身体を守ること」と書いていますが、これは正しいと言えます。
この防衛の仕事が半端ではないのです。おそらく幹部防衛の仕事は、戦後、50年問題を克服して党が再建される過程で生まれたと思いますが、本格的に人員も大幅に増やし、組織的にも整備されたのは1973年以降のことです。この年、宮本顕治委員長が熊本空港で右翼に襲撃される事件があったことを受け、全国の党組織に対して「ふさわしい人を中央に出せ」という指令が下ったのです。
その結果、「機構と人事」にあるように、役付きだけでも相当な人数になっています。委員長、書記局長、場合によっては議長には専任で数名が付いて、24時間体制で防衛するのです。副委員長の場合、専任することはなくてローテーションで回すのですが、副委員長は数も少なくないので、それなりの数になります。さらに、それだけの数の最高幹部の移動手段は、党が所有する自動車になるので、その運転手も必要になってきます（この仕事のために「車両部」という独自の部署もある。篠原氏は「自動車部」と書いていますが）。
共産党における防衛の仕事の骨格をつくった人は2人いると言われています。すでに故人となっていますが、1人は宮本忠人氏で、もう1人は上田均氏です。
宮本氏は、私が全学連で活動していて頃、共産党の青年学生対策の責任者をしていましたから、面識があるというかお話をしたこともあります。幹部防衛の仕事にはピッタリの人でした。なぜなら戦時中、天皇を警護する近衛師団に属しており、敗戦も皇居で迎えたような人だからです。出張を準備する際、あるルートが事故などで使えなくなることを想定し、つねに別のルートも予備で確保するなど、有事の対応が身についた人でもありました（私もまねしようと思ったが無理でした）。
もう1人の上田氏も同じ時期に党本部におられて、「機構と人事」にあった幹部会（現在は中央委員会）事務室の責任者をしていて、第二事務も担当しておられました。ガタイは大きくないが、鍛えられた感じで、ちょっと近づきがたかった印象です。戦時中は八路軍にいて、そこで防衛の仕事を覚えたのだと聞かされたことがありますが、真偽のほどは定かではありません。
なお、篠原氏は、小林栄三氏（故人）が「裏部隊」の責任者だった書いており、第二事務に責任負っていたと思っているようだが、これは完全な勘違いです。何かの都合で小林氏が依頼されて仕事をすることはあったかもしれませんが、小林氏は主に理論面での仕事をしていて、第二事務の責任者はずっと上田氏だったと思います。
いずれにせよ、宮本氏が襲撃される事件をきっかけに、共産党は本格的に防衛の仕事に取り組んだわけです。1961年綱領のもとでは、この間連載してきた「敵の出方論」でも分かるように、警察権力などが共産党に暴力的に襲いかかってくることを想定していたわけですから、幹部の防衛の仕事について他党のように国のSPに依存するようなことは想定もできないことだったでしょう。
いまでは想像もできないと思いますが、60年代のメディアで共産党を担当していたのは、政治部ではなく社会部でした。共産党は、この世の中において、政治の対象ではなく、治安・警察の対象だったのです。60年代末から70年代初頭の躍進でそれは変わっていくのですが、70年代になっても政治もメディアもそして共産党も、まだ60年代を引きずっていたのです。（続）