11月に党大会に向けた再審査請求書を出した後、その実現のための活動を活発化させます。各地を回って対談し、それをYouTube動画にもアップしていきます。その予告編をご覧ください。

 

 

●「敵の出方論」とは何なのか

 

 公安調査庁が共産党を破防法の調査対象団体として指定しているもう一つの理由の問題に移りましょう。「『いわゆる敵の出方論』を採用し、暴力革命の可能性を否定することなく、現在に至っている」という問題です。

 

 公安調査庁が問題にする「敵の出方論」とは、そもそもどのようなものなのでしょうか。志位氏の『新・綱領教室』では次のようにまとめられています。

 

「①選挙で多数の支持を得て誕生した民主的政権に対して、反動勢力があれこれの不法な暴挙に出たさいには、国民とともに秩序維持のために必要な合法的措置をとる。②民主的政権ができる以前に、反動勢力が民主主義を暴力的に破壊しようとした場合には、広範な国民世論を結集してこれを許さないというものである。」

 

 これがなぜ「敵の出方論」と呼ばれるのか。まず「敵」について言えば、そのような用語は現在の綱領には存在していませんが、古い一九六一年の綱領では中心的な概念でした。共産党が当面の目標としている民主主義革命は、「二つの敵」に反対することで達成されるという考え方をしていたのです。

 

「以上の全体からでてくる展望として、現在、日本の当面する革命は、アメリカ帝国主義と日本の独占資本の支配──二つの敵に反対するあたらしい民主主義革命、人民の民主主義革命である。」

 

 その敵の「出方」という言い方をしているのは、日本共産党が民主主義革命を達成しようとする時、敵の出方次第では、共産党の対応が異なったものになるからです。共産党が平和的に国会で多数になって政権をとろうとする際、敵もそれを国民の選択肢だとして尊重するならば、革命は平和的なものになりますので、共産党が心配する必要はありません。一方、敵が暴力に訴えてでも共産党の政権参加を阻止しようとする場合、共産党もそれにふさわしい対応をすることになります。

 

 では敵が暴力に訴えてくる場合、共産党の対応はどんなものか。それが先ほど引用した志位氏の言明です。①は、すでに共産党が国民の支持を得て政権に参加したあとの場合であり、②は、政権参加以前に「敵」が暴力で共産党に襲いかかってくる場合になります。

 

●旧綱領で「敵の出方論」が不可欠だった理由

 

 ところで、旧綱領下の共産党は、なぜ「敵」の暴力を心配していたのでしょうか。それを知るためには、一九六一年の旧綱領の革命論を理解しなければなりません。当時の共産党は、政権に就くことが現実味を帯びてきた場合、「二つの敵(アメリカ帝国主義と日本独占資本)」とその意向を受けて動く政府機関(自衛隊や警察)が、共産党に対して暴力的に襲いかかってくると考えていました。

 

 通常、議会を通じての平和的な変革と言われて思い浮かぶのは、「国権の最高機関」であり立法権力を有する国会で多数の議席を獲得し、総理大臣を輩出して行政権も手中に収めることでしょう(さすがに司法権までは及ばないが三権のうち二権までは握ることになる)。けれども、旧綱領では、共産党が国会で多数となって政府(民族民主統一戦線政府と呼ばれていた)を樹立しても、ただちに権力を握ることにはならず、革命は達成されないという見地が打ち出されていました。実際の権力は三権とは別のところにあるという考え方からです。 旧綱領を見てください。

 

「民族民主統一戦線のうえにたつ政府をつくることは、アメリカ帝国主義と日本反動勢力のあらゆる妨害に抗しての闘争である。この政府が革命の政府となるかどうかは、それをささえる民族民主統一戦線の力の成長の程度にかかっている。」

 

 政府をつくっても「この政府が革命の政府となるかどうかは」分からない。「革命の政府」になるには、「民族民主統一戦線の力の成長」が必要だ──。これが引用文の意味です。さらに旧綱領を引用します。

 

「党と労働者階級の指導的役割が十分に発揮されて、アメリカ帝国主義と日本独占資本に反対する強大な民族民主統一戦線が発展し、反民族的・反人民的勢力を敗北させるならば、そのうえにたつ民族民主統一戦線政府は革命の政府となり、わが国の独占貿本を中心とする売国的反動支配をたおし、わが国からアメリカ帝国主義をおいはらって、主権を回復し人民の手に権力をにぎることができる。」

 

 「革命の政府」をつくるには、「民族民主統一戦線」は何をするのか。「独占貿本を中心とする売国的反動支配をたおし、わが国からアメリカ帝国主義をおいはら」う。そうやってようやく「人民の手に権力をにぎることができる」──。旧綱領はこういう見地に立っていました。

 

 要するに、日本で「権力」を握っているのは国会や政府などの三権ではなく、独占資本とアメリカ帝国主義である。だから、国会や政府を握るにとどまらず、実際の権力である「二つの敵」を倒さなければならない。そうしないと権力を握ることはできず、民主主義革命は達成しないというのが、旧綱領の見地だったのです。