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 中祖寅一様

 

 共産党が何名かのグループをつくり、私と権力、メディアの結びつきに関して調査を行っていることは、かねてから私の耳にも入っていました。それを間接的に教えてくれる「赤旗」記者がいましたし、調査された側のメディアからも、そういう情報を伝えてくれる人がいました。まさか旧知の中祖さんがその中心にいるとは思いもしませんでしたが。

 

 市田副委員長などが各地の演説会で、私が文藝春秋社から本を出し、日本記者クラブで講演したことなどをもって、私と権力の結びつきの証明であるかのようなお話しをしているのは、イヤでも耳に入ってきます。それを名誉棄損として訴えるまではしなかったのは、無責任な放談をする高齢の幹部はどの党にもいるものであって(誰もが何人かの顔を思い浮かべることができるでしょう)、党の公式の発言だとは思わなかったからです。ところが、まさか党として正式にそういう調査を行い、中央委員会総会で発言させて党として公式に結語で認定するための作業をするなど、あり得ないことです。

 

 だって、まず文藝春秋社について言えば、月刊誌「文藝春秋」には党の幹部も何回も登場しています。70年代までは宮本顕治氏が常連でしたし、90年代には不破哲三氏が、21世紀になってからは志位和夫氏も、インタビューその他のかたちで寄稿しています。文藝春秋社から本を出したことを権力や反共メディアとの結びつきの証拠だとしていたら、共産党の歴代党首は全員が反共勢力と結託していることになります。

 

 日本記者クラブだって同じでしょう。選挙になれば党首(共産党に限らず)はみんな登壇して演説するのです。日本記者クラブは日本の主だった新聞社、放送局が加盟しており、そこで講演するには何社かから出ている幹事全員の承認が必要です。共産党がどこかを「反共メディア」と認定していても、そこだけの了解では私は講演できないのですから(実際、赤木雅子さんをお呼びする提案が一社の反対でつぶれたこともあったそうです)、講演したことをもって「反共メディア」との結託ということになるなら、共産党は日本のメディアすべてを「反共メディア」認定していることになります。いまの党中央を見ていると、敵が多ければ多いほど、党の革命性が試されるのでいいことだと考えているようですから(私は仲間をどう増やすかをいちばん大事だと考えますが)、実際にそう認定しているのかもしれませんね。

 

 それにしても、小池氏の結語によれば、権力とメディアを区別しているので、私が結びついているとされる「権力」はメディアとは異なるのでしょう。しかしこれが何を意味するかは、さっぱり分かりません。中祖さんはいやしくもジャーナリストを名乗っているですから、何かを活字として公表する場合、ちゃんと取材するのだと思います。憶測で書いたり、状況証拠で推定するようなことはしないでしょう。私と権力が結びついている事実を明らかにしようとするなら、新聞記者なら少なくとも、私と「権力」の双方に取材して証拠を得ることが不可欠です。私は取材された記憶がありませんから、それでもおおやけの場でそういう発言をされたということは、権力側には取材されたのでしょう。そして、その取材結果が満足行くものだったので、私への取材は不要だと判断したのでしょう。共産党が権力情報に踊らされていいのかという大問題はありますが、信用するに足る情報だというなら、はやくその証拠を公開することをお薦めします。

 

 党員の誰かを排除しようとする場合、その党員と権力の結びつきをでっち上げるやり方は、除名劇で彩られてきた世界の共産党の歴史のなかでも、かなり稀有なことです。最初にそういうやり方が取られたのは、詳しくは明日から書きますが、スターリン時代でしょう。スターリンのやり方が、100年を経て、ユーラシア大陸をも越えて、中祖さんの手で日本の共産党に再現される時代が来るなんて、どう表現したら私の驚きをお伝えできるのか、さっぱり分かりません。(続)