四、復党して党首公選が実施されたら、立候補して訴えたい問題

1、現綱領と現規約を党活動に素直に反映させる党改革を

●綱領では第一段階と第二・第三段階の関係を整理すればいい(了)

●第一段階にふさわしい政策と党活動は「一三〇%の党づくり」に欠かせない

 

 共産党は現在、「一三〇%の党づくり」に全力をあげています。それを成功させるためにも、第三段階に至る理想を堅持しつつ、当面の政策としては第一段階にふさわしいものを掲げ、対象者に働きかけることが大事だと思います。理由は簡単で、安保条約の即時廃棄や自衛隊の解消を基本政策や綱領上の当面の課題とすれば、国民多数は入党の対象者から外れてしまうからです。

 

 内閣府は何十年もの間、「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」を行い、公表してきました。最新のものは、二〇二二年一一月に実施され、二三年三月に公表されています。

 

 この調査のなかでは、「日米安全保障条約と自衛隊の防衛はどうあるべきだと思いますか」という問いがあります。それに対する答えを見ると、「日米安全保障条約をやめて、自衛隊も縮小または廃止するべきである」は一・六%に止まっています。共産党は安保・自衛隊の解消について三段階論をとり、安保を廃止するのは第二段階、自衛隊も廃止するのは第三段階ですが、最後の第三段階まで含めてこれに賛成する国民は一・六%に過ぎないということです。「日米安全保障条約をやめて、自衛隊だけで日本の安全を守るべきである」は、第二段階までなら賛成するという人であることを意味しますが、それも五・六%に止まっています。

 

 つまり、共産党が三段階論を採用し、第一段階では安保も自衛隊も維持すると表明していることは、国民世論に合致した考え方なのです。ところが現在の共産党は、安保と自衛隊を維持することを前提とした政策を打ち出すことなく、第一段階においても基本政策は安保廃棄と自衛隊違憲解消だと言い続けています。共産党が国民に働きかければ、少しでも現状の国民世論が変わることが見込めるなら、いまの路線で進むこともあり得るでしょう。しかし、この世論調査の結果を見ると、それも無理だと分かります。

 

 世論調査では、「あなたは、自衛隊の規模をどのようにした方がよいと思いますか」の問いも発せられています。これに対して「増強した方がよい」が四一・五%、「今の程度でよい」が五三・〇%、「縮小した方がよい」が三・六%です。同じ調査が一九九一年にも行われましたが、当事、「縮小した方がよい」は二〇%ありました。それがどんどん減って、三・六%にまで落ち込んだのです。しかもこの間、「九条の会」が結成されて世論を盛り上げたのにこういう結果になっているのですから、この傾向を逆転させることは容易ではありません。これは国民世論が間違っているということではありません。やはり、この再審査請求書で主張してきたように、日本を取り巻く情勢が旧綱領当時とは大きく様変わりした現実があり、その現実が国民意識に投影していることのあらわれなのです。

 

 一方、同じ世論調査を見ると、自衛隊の海外での活動の今後についての問いでは、「これまで以上に積極的に取り組むべきである」は二〇・〇%に止まっています。「現状の取り組みを維持すべきである」が六八・一%、「これまでの取り組みから縮小すべきである」七・五%、「取り組むべきでない」一・四%です。党綱領は当面の第一段階において、「自衛隊については、海外派兵立法をやめ、軍縮の措置をとる」としていますから、国民の意識から大きく乖離しているわけではありません。

 

 また、「あなたは、自衛隊にどのような役割を期待しますか」の問いへの答えも(複数回答)、党が第一段階を設けたことの意味を浮き彫りにしています。答えを見ると、「災害派遣」が八八・三%と多いのはそれまでの調査と同じですが、「周辺海空域における安全確保、島々に対する攻撃への対応など国の安全の確保」も七八・三%、「住民の避難など、日本が武力攻撃を受けた時の国民の保護」が七七・七%となっています。他方、「宇宙空間やサイバー空間などの安定利用への貢献」は一七・二%に過ぎません。

 

 これらの世論調査から分かることは、侵略と大規模災害の際には自衛隊を活用するけれど(安保条約第五条も発動する)、海外派兵立法はしないという党の方針は、国民の気持に合致するものだということです。それなのに、入党の働きかけの際には、「安保即時廃棄と自衛隊解消」が基本政策で綱領の考え方だと単純化してしまえば、いつまで経っても「一三〇%の党づくり」は軌道に乗らないでしょう。ましてや、第一段階では安保と自衛隊を堅持しようとする主張は綱領違反とされ、それを訴えた党員は除名される現状を放置していては、党はいつまで経っても国民の一%程度を相手に活動する党のままです。社会主義・共産主義の実現は理想として語りつつ、資本主義の枠内での政策を基本政策として打ち出しているように、自衛隊解消に至る理想は堅持して安保廃棄も含めてその意義を明らかにしつつ、当面の基本政策は安保と自衛隊を前提としたものにすること、私流にいえば「核抑止抜きの専守防衛」を基本政策にすえることが、党の前進にとっては大事だと考えます。(続)