三、規約を理解せず、踏みにじっているのは、除名した党の側である

1、言ってもいないこと(=「異論を許さない党」)を処分の理由にできない

2、私はいかなる意味でも「分派」を形成したことはない

3、分派を禁止する規定は旧規約には存在したが現行規約からは外された

4、内部で意見をあげるのは義務ではなく権利であり、反しても処分の対象にならない

5、党の内部問題と党外での意見発表、党首公選の問題をめぐって

6、規約にもとづく処分をしながら関連用語の定義を示さないのは許されない

 

6、規約にもとづく処分をしながら関連用語の定義を示さないのは許されない

 

 私の除名処分が規約にある「分派はつくらない」(第三条)とか、「内部問題」なのに「(異論を)勝手に発表した」(第五条)などを根拠に行われたことを、これまで紹介してきました。「処分通知書」では、京都南地区委員会によって、それらの用語が自由自在に使われています。

 

 しかし、「内部問題」というあいまいな用語にせよ、「分派」というおどろおどろしい用語にせよ、それが何を意味するのか規約には書かれていません。その種の党公認の解説書を見たこともありません。だから私も、この審査請求書では、「分派」については規約の創始者とも言える宮本顕治のものを援用せざるを得ませんでした。けれども、宮本の定義で私の行為を判断すると、私はどういう意味でも分派を形成したことにはならないのです。ですから、処分を決定した地区委員会もそれを承認した府委員会もそれを支持している中央委員会も、宮本とは異なる定義をしているはずなのです。

 

 現在の党中央が、処分に関する規約の関連用語をどう定義、解釈しているのかが分からないと、私の行為が処分に値するのかどうかも判断できません。私が党大会での実施を求めている再審査にあたって、私の訴えが正当かどうか、大会代議員が判断することもできません。

 

 そこで私は、今年四月二五日、個人情報保護法にもとづき、党中央委員会に対して「保有個人情報の開示請求書」を送り、私の除名に関連する個人情報の資料の提供を求めました。これは、二〇〇三年に成立した個人情報保護法にもとづくものです。

 

 この法律は、個人情報を保有している事業者に対してその情報の保護を求めるものですが、同時に個人情報の開示を本人が事業者に請求できること(第三三条一項)、事業者はその際、「遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならない」こと(同二項)を規定しています。この法律は一方では、報道機関や政治団体等に対しては、これらの義務を適用除外としています(第五七条一項)が、他方、法の適用除外団体であっても、「個人情報等の適正な取扱いを確保するために必要な措置を自ら講じ、かつ、当該措置の内容を公表するよう努めなければならない」(第五七条三項)と定めており、この規定をふまえ日本共産党もウェブサイトで公表しているプライバシーポリシーにおいて、「個人情報保護に関する国内法令・規則を遵守します」と定めています。つまり、共産党には、実質的には保有個人情報の開示義務があるということです。

 

 私が開示を求めた個人情報は四つにわたります。一つは、除名を決定した京都南地区党、承認した京都府党から受け取った「処分報告項目例」(党中央規律委員会が処分を決定した党組織に提出を求めるもので、「処分の内容」「処分の理由(規律違反の事実と経過)」「適用した規約条項」「意見表明(弁明)の機会」などが含まれる)などの「全資料」。二つは、「党員の処分に関する規約の運用マニュアル(私に対する処分について、いかなる理由にもとづいてどのような処分基準の運用によって除名処分が選択されたのかが分かる資料)」。三つは、「派閥・分派」「内部問題」「特別な事情のもとでは」など、処分の根拠とされた規約の用語の定義、解釈が分かる資料。四つは、「被除名者による『再審査の求め』に関する手続が分かる資料」。以上です。

 

 その後も現在まで、何回か党中央とやり取りを重ねましたが、ほとんどがゼロ回答でした。回答があったと言えるのは、四つ目の問題だけで、「除名に関しての再審査については、被除名者がいかなる書式で提出しようと再審査の対象になることは申し添えておきます」(以下、とくに明示しない限り、五月一五日付の党書記局の回答)だけです。私が再審査請求書を書いているのは、この回答に根拠があります。

 

 一つ目の問題の回答は、「党規律委員会が受け取った『処分報告項目例』などの関連資料の内、あなたの個人情報に関わる部分はすでに『しんぶん赤旗』などで発表されているもので、それ以外に個人情報に該当するものは保有していません」というものでした。私の除名に関する「処分報告項目例」を受け取ったことは認めているのです。ところがそれを含め、私に関する情報は「赤旗」に出ているし、それ以外の情報は保有していないと主張しています。しかし、例えば「処分報告項目例」に書かれるべき「意見表明(弁明)の機会」について、この再審査請求書の一の3で詳しく述べたように、私と党中央(党中央規律委員会の三月一五日付の返事)の間には、大きな認識の違いがあります。それならば、党中央の見解が正しいことを証明するためにも、京都から受け取った文書をそのまま開示すべきではないでしょうか。それとも開示すると困るようなことが書かれているのでしょうか。

 

 二つ目の問題の回答は、「『(規約の)運用マニュアル』なるものについては、個人情報に該当していないので、その有無をふくめて回答の必要はないものと考えます」というものです。三つ目については、「用語の定義であり、個人情報には該当しません」でした。

 

 これらは驚くべき回答だと言わなければなりません。「除名」などの用語がどう定義されるかも含め規約がどう運用されているかは、一般的普遍的な性格を有するものではありますが、私を除名した根拠を示すものでもあり、「個人情報に該当していない」どころか、個人情報に密接不可分なものであって、個人情報とすべきものです。この種の情報の開示請求を拒否するようなことを許していたら、「分派」や「内部問題」など処分にかかわる情報は、いつまで経っても闇の中にしか存在しないことになります。党員を処分するかどうかは、問題が起きた時、党中央だけが闇の中から解釈を引き出し、それを適用するのだということになります。そうなってしまうと、規約の解釈を維持するのも必要に応じて変更するのも、すべて党中央の自由だということになります。闇の中にあるのですから、党員は、自分を処分した規約の解釈が、これまでの解釈と同じなのか新たな解釈なのかさえ分かりません。それは党員にとっては、今回の私の問題が象徴するように、事前には何が除名に値するか明示されないまま、党員がある行為に及んだあとで初めて、「これは除名に値する行為だ」という判断を党中央が下せることを意味します。(続、三についての連載は明日で終わります)