一か月ほど前、党大会の再審査に向かう方針に関して記者会見を行い、ライブ中継しましたが、一時間を超える長さなので、見やすくするために短時間版を作成しました。昨日夕方にアップしたものです。この続きは本日夕方です。チャンネル登録の上、ご視聴ください。

 

 

二、安保・自衛隊問題での私の主張は旧綱領に反するが新綱領には合致する

1、志位委員長の安保・自衛隊問題の努力を実らせることが除名になる不思議

●志位氏による自衛隊活用論と日米安保条約第五条発動論の提起

●自衛隊合憲論でも志位氏は大胆に踏み込んだ

●志位氏と私の提唱の異なる点は除名に値するほどのものか

●再審査で除名を正当化するなら志位氏の反省と著作の撤回が不可欠となる

2、新綱領の安全保障の考え方は、旧綱領とは本質的に異なっている

●志位氏の踏み込みには綱領上の根拠があった

●「平和の社会主義を侵略するための安保条約」は成り立たなくなった

●帝国主義に対する見方が旧綱領と現綱領では根本的に異なる

●新綱領にもとづく創意的な発展が求められている

 

1、志位委員長の安保・自衛隊問題の努力を実らせることが除名になる不思議

 

●志位氏と私の提唱の異なる点は除名に値するほどのものか

 

 こうして志位氏と共通の基本認識に到達した私が世に問うたのが、今年一月に刊行した『シン・日本共産党宣言』でした。そこで提唱した「核抑止抜きの専守防衛」という基本政策でした。志位氏の基本認識と私の提唱を比べると、共通点も違いもあります。

 

 侵略されたら自衛隊を活用するという考え方では、どこにも違いはありません。だから「処分通知書」もそれを批判していないのでしょう。

 

 安保条約の発動はどうでしょうか。志位氏は条約第五条の発動を明言しています。私もそこは同じですが、大きく異なるのは、私は五条を発動する場合も志位氏のように無条件に米軍の出動を認めるのではなく、核兵器の使用は許さない立場で「核抑止抜き」と明確に限定していることです。ですから、私の主張が綱領違反であって除名に値するのであれば、志位氏の発言は除名よりさらに重い処分を科さないと釣り合いがとれません。

 

 ただし、共産党が核抑止力に反対していることは明白なので、それを将来構想に引きのばすのではなく、志位氏も野党連合政権に対して「核抑止抜き」を求める可能性もあります。その場合、両者の違いはそれほど大きなものではないかもしれませんが、志位氏が私の先を進んでいる事実に変わりはありません。

 

 自衛隊違憲論について言うと、安保条約の問題と異なり、私のほうが少し先を行っていると思います。志位氏は、政権としては合憲だが党としては違憲という立場を明確にしています。私の場合は、個々の党員の憲法判断は党員に任せるが、政党としての共産党は自衛隊合憲論をとるべきだというものです。

 

 志位氏と私が共通しているのは、共産党のくわわる政権は自衛隊合憲論をとるということです。すでに述べたように、安全保障の観点からは自衛隊を維持することが前提になっているもとで、一方で政権が自衛隊違憲論に立ってしまえば、自衛隊解消に踏みださない限り立憲主義を踏みにじる政権として指弾されるし、他方で自衛隊解消に踏みだしてしまえば、国民の安全に責任を持てない政権として批判を浴びることになるのです。自衛隊を解消する政策を選挙で掲げたことはありませんから、公約違反も問われます。その点で両者が一致しているのは大事なことだと思います。

 

 両者の違いは、政党としてどうするのかにあります。志位氏が政党としては違憲という立場にこだわる気持はよく理解できます。これまでずっと違憲論でやってきた歴史は重いものがありますし、自衛隊合憲論へと転換した社会党が凋落した経験は記憶から消え去らないでしょう。違憲論を捨てると軍隊のない世界という理想まで放棄することになるという危惧もあるかもしれません。

 

 しかしまず、共産党はそもそも暴力と抑圧のなくなる共産主義を理想としてきたのであり、憲法で規定するかどうかにかかわらず軍隊のない世界をめざしてきたのですから、自衛隊違憲論に立たないからといって理想を失うほど思想的な弱みはありません。また社会党が凋落した原因は、自衛隊合憲論に転換したに止まらず、核抑止依存も含め防衛政策全般で自民党に屈服して独自の政策を打ち出せなくなり、存在意義を喪失したことにあります。共産党が他の党にはない独自の政策を提示できれば克服できるものですし、逆に、現在のように安保廃棄・自衛隊解消を将来だけでなく当面の基本政策としている限り、野党連合政権に入るにしても基本政策を脇に置くという対応をするしかなく、創造的な政策を提示して野党間で議論することもできません。民主連合政府は自衛隊合憲という立場で政策を遂行しているのに、その政府の閣僚の多数を出している共産党は自衛隊違憲の立場の政策遂行を求めるというのでは、あまりにちぐはぐで政権としての安定性を欠くのではないでしょうか。党員個々人が自衛隊を違憲だとして自分の信条を貫くことを保障しつつ、国民のいのちに責任を負う政党としては、自衛隊合憲論に立つしかないと思います。

 

 その上で、私が提唱しているのは、志位氏も(共産党も)侵略されたら自衛隊を活用する、安保条約第五条を発動すると言っているのだから、それが共産党の政策だと宣言すればいいのではないかということです。もちろん、あとで述べるように、共産党は中長期的には安保条約を廃棄し、自衛隊も解消される日本をめざしているのですが、短期的にはこれを基本政策だと言えばいいのではないかということです。

 

 いままで述べてきたことについて、志位氏と私の考えはほぼ同じだという人もいれば、いや違いは大きいという人もいるでしょう。ただ多少の違いがあるとしても、志位氏は党首に止まり続けることができるが、私はただちに除名されるほどの違いなのでしょうか。違いがあることを認め、議論すればいいという程度のものではないでしょうか。この違いを私の除名にまで持って行った京都の党の判断は誤りだと思います。(続)