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 さて、連載の続き。

 

 たとえ共産党が議会で多数を占めて政府を樹立しても、独占資本とアメリカ帝国主義の「二つの敵」を打倒しないと権力が人民の手に移って来ることはなく、それでは革命にはならない。では、「二つの敵」打倒のために何をするのか。これは61年綱領に書いているわけではないが、私が学生だった当時、党員に対する教育などでいろいろ叩き込まれた。

 

 まず、独占資本の打倒である。これは、私が一橋大学に在学していて、卒業生の多数が独占資本に就職していたから特殊だったのかもしれないが、先輩からはいろいろ教育されることになる。

 

 曰く。共産党が議会で多数になり、民主連合政府を樹立して首相をはじめ閣僚を握り、選挙で公約した政策を実施しようとすれば、必ず独占資本はサボタージュを行う。生産を止めて、交通や放送も止めて、金融も止めて、日本経済を大混乱状態に陥れ、国民を不安のどん底に突き落とす。そうやって民主連合政府への不信感を煽り、政府を打倒しようとする。それを許さないため、国民的な規模で独占資本の横暴を許さない大革命デモンストレーションを敢行する。同時に、我が一橋大学の党員の任務は、独占資本に就職し、努力して出世して経営陣の一角を占めるようになり、資本側がサボタージュしようとするときは、それに反対する側の経営者を多数にするのだ。そうやって「権力」を奪うのだ。そのために頑張れ。そういう内容の教育だった。

 

 いまそんなことを聞かされても、多くの人にとっては空想の世界の話だろう。けれども、当時の一橋大学には、その教育内容に真実味を持たせるだけの多くの党員がいて、党組織の存在もオモテに出していなかったので、私はその教育を当然のこととして受け止めていた。普通なら明らかにしてはならないのだけれど、当時付き合いのあった党員は、ほぼ全員がすでに退職しているので、書いてしまうけれど。

 

 そうか、独占資本に就職すれば、党活動もせず、出世が任務だから給与もたくさんもらって、いい人生が送れるだろうなと思う人もいるかもしれない。でも、この任務って、たいへんなのだ。

 

 50歳代で早世してしまった人のことなので、書いても問題にならないだろう。私とは中学校のときから部活動を通じて面識があり、高校も大学も同じだった親友のことである。独占資本で出世する任務を与えられたが、党員としての自覚を失ってしまうと、その任務も遂行できなくなり、党としても困る。そこで、一か月に一回、山に登って党の人と会い、党費を払い、一か月分の「赤旗」を渡され、その場で読み終えたら党の人に戻して下山する。そういう生活をずっと続けるのである。苦しくないはずがない。その親友は、アメリカに長期赴任している間にクリスチャンとなり、党からも離れていった。葬儀の際は私が友人代表で弔辞を述べたけれど、過酷な任務を党から与えられたことが寿命を縮めたのではないかと思うと、涙が止まらなかった。

 

 ただし現在、そんな任務が現実的に可能になるほど、大学には党組織が存在していない。その任務が遂行できないと敵を打倒できず、「権力」も移行しないとなってしまえば、永遠に革命は訪れないのが現状だ。

 

 それ以上に、61年綱領は廃止され、2004年綱領では革命の位置づけが変わったので、同じ任務は与えられないはずである。新綱領でどう変わったのかの話はあと回しにして、次は、もう一つの「敵」の話である。(続)