最近、共産党のことばかり書いているが、話題が尽きないのは、それだけ共産党の提供する話題が多いことと、それが耳目を引きやすい話題だからだろう。批判的なことを書く場合も少なくないが、本日は評価するもの。「赤旗」で最近の共産党らしくない常識的な論評を見かけたので、紹介しておきたい。外部の知識人の講演だからかもしれないけれど。

 

犯罪機会論から見たトイレ防犯

立正大学文学部社会学科教授(犯罪学) 小宮信夫さんの講演から

2023年7月7日【くらし】8面

 

犯罪が起きる機会(チャンス)に着目した犯罪機会論から公共トイレを考えよう―。こんな勉強会が6月23日、日本トイレ研究所主催で開かれました。立正大学教授の小宮信夫さん(犯罪学)が犯罪抑止に必要な環境整備について話しました。(手島陽子)

 

 多くの犯罪は、動機があるだけでは成立せず、動機をもつ人物がチャンスに巡り合ったときに起きます。この、犯罪が起きる機会(チャンス)に着目するのが犯罪機会論です。

……

 犯罪を抑止する対策は、ハード面では(1)防犯環境設計、ソフト面で(2)地域安全マップと(3)ホットスポットパトロールの三つです。

 

 このうちトイレは防犯環境設計にあたります。男性が女性を連れ込む犯罪を想定した時、女性用と男性用が同じ通路にあるなら、女性用を奥に、男性用を手前にします。男性が奥に向かうと不審に思われるようにするのです。

 

 男女のトイレの入り口を離したり、動線を分けたりすると、男性は近づきにくくなります。また、入り口が見えにくい位置にあると、犯罪者は近づきやすくなります。

 

 最近、オールジェンダートイレが話題です。これ自体はいいのですが、すべてをオールジェンダートイレにして女性用トイレをなくすというのは犯罪予防の観点からも問題があります。社会が多様性を尊重しようという中で、女性用がなくなるのは逆行ではないでしょうか。オールジェンダートイレは、男性用、女性用に加えて、プラスワンで作ること。スペースが許すならば、男性用を女性用から離して作るといいと思います。

 

 海外では、男女のトイレを離して、どちらにも多目的トイレ(障害者用トイレ・オールジェンダートイレなど)がついているのを見かけます。

 

 2022年に全国の警察が認知した「強制性交等」の件数は1656件、強制わいせつは4708件です。被害届をもとにしているため、実際には警察の認知件数の7倍あると推計できます。盗撮や子どもの被害を含めるとさらに多いでしょう。

 

 一方で、トイレにおける犯罪件数については実は把握されていません。現状は、イメージ先行の議論になっているので、しっかりしたデータに基づく科学的な検証が必要です。

 

 不審者という言葉がありますが、定義が明確でなく、不審者情報を集めようとすると、知的障害者などの情報が集まってしまうのが現状です。「不審者」に注目するのではなく、犯罪が起きやすい環境に着目し、改善するのが犯罪機会論なのです。