これだけ赤字を増やし、もう毎月の党の運用にさえ困難を来しているのに、いつまで経っても党指導部からは「赤旗」改革提案が聞こえてこない。本当にびっくりだが、一つだけ、「ああ、こんなことを考えているなら、改革案は出てこないよね」と思わせるものがある。

 

 何かと言えば、いまのまま紙版をなくし、現行の電子版だけにするというものだ。日曜版を電子化するという8中総の方針は、そういう方向への移行を考えていることを裏付けているのではないか。

 

 これは、党指導部にとっては、まことに都合のいい案である。いくつもいいことがある。

 

 まず、何も考えなくていい。いまの体制で発行しているものを継続し、ただ紙のものを廃刊すればいいだけだ。何も考えない現在の党指導部らしい案である。

 

 さらに、とりあえずの財政危機は回避できる。印刷費用も紙代も不要になる。中央から出している配達援助金も不要になる。さらには、現在は地方党組織への還元金の制度があるが、中央が一括して読者を管理する電子版は購読費用全額を党中央が独り占めできる方式なので、それを継続すればボロもうけである。

 

 「赤旗」記者の転職の世話も不要だ。配達網の維持はすでに不可能になっているので、地方の負担を減らせる。

 

 いやあ、バラ色の改革案だ。党中央にとってだけど。

 

 しかし、これは、「赤旗」と共産党が自壊する道を少しだけ遅くする案だけである。それもせいぜい1年程度であって、「電子化を果たした」という満足感に浸って改革を怠る分、自壊はいっきょにやってくるというか、止めるのが不可能なものとして押し寄せてくるだろう。

 

 私も電子版を購読しているが、紙面全体をPDF化する現在の形式のものは、はっきりいって読むのが困難である。私が電子版を購読しているのは、出張先でも毎朝、読めるようにするためだけであって、一箇所にいるなら紙の版にする。紙の版をなくし電子版しかないという状態になれば、読者は確実に減っていく。

 

 確かに記事のいくつかはテキストがあって、コピペなどができる。でも、ただそれだけだ。テーマごとに階層化できるわけではなく、検索もできない。ネット化する利点が何もないのだ。私も朝日を紙とネットで購読しはじめた10年ほど前は、慣れもあってネット版は最初はPDFファイルを読んでいたが、1年もしない利用しなくなった。そんな利用の仕方なら、紙と変わらないからだ。

 

 要するに、そんなやり方は、どうやったら党がネットで国民と結びつき、国民とともに運動を広げていくのかという、もっとも大事な視点が欠けている案なのである。電子版は紙のものをパソコンでも読めるようにしたというものであって、ネット時代のメディアの資格はない。何十万円も月給をもらっている中央委員がまじめに考えたり賛成していい案ではない。

 

 なお最後に、私の考える改革案で、読者を一挙に増やす方法を伝授。ネット版創刊号の最初のスクープ記事は、志位さんと私の対談ということでどうだろうか。話題爆発間違いなし。いっきょに部数を伸ばせると思うけれど。だめかなあ。(了)