ではどうすればいいのか。国民民主党とれいわの採決当日の発言にはヒントが含まれているのではなかろうか。

 

 国民民主党の玉木代表は記者団にこう述べたとされる。

 

「内閣を信任したという批判は甘んじて受けるが、近年、漫然と行われている会期末の不信任決議案の提出には反対だ。出すのであれば、野党第一党は、ほかの野党にも丁寧に説明して働きかけ、野党全体をまとめる努力をするべきだ。」

 

 れいわ新撰組は、採決の当日、こんな声明文を出した。

 

「今回の内閣不信任案を前に審議されていたのは、野党各党がこぞって反対していた防衛財源確保法。……仮に昨日、委員会で、防衛財源確保法が成立する前に野党第一党が内閣不信任案を提出したならば、委員会での採決もされていないし、本日の参議院本会議での増税法案の採決も先延ばしにできたはずだ。内閣不信任案の提出時期についても、この考え方に基づき、法案採決前に提出されるのであれば当然、賛成すべきと考えていた。しかしながら、今回の不信任案を野党第一党が提出したのは、本日の参議院本会議で防衛財源確保法が成立した後だった。……生ぬるい野党第一党による不信任案には「棄権」するものである。」

 

 要するに、他の野党も、岸田内閣を信任しているわけではない。適切なタイミングと野党をまとめる努力があれば不信任案に賛成する可能性があったのだ。さらにいえば維新だって、馬場代表は「泉代表は(内閣不信任案に反対した維新を)御用野党と言うが、どちらが戦う野党か次の選挙で証明される」と息巻いていた。不信任案に反対したが、「戦う野党」としての維新を見せたいと思っているのである。

 

 現在、野党の立ち位置はバラバラである。率直に言って、政権協力ができるほど政策が一致していて、政権をともにできるほどの信頼関係にある政党は、どの党を見渡しても存在しない。

 

 そんななかで、野党同士の協力のありかたをどうするかでは、これまでと違ったアプローチが必要である。どの党とはどこまで協力できて、別の党とはどこまでかという見極めが求められる。野党すべてが協力できる問題もあれば、一部の党だけが協力できる問題もあるし、ドライに割り切った共闘もあれば、信頼関係構築につながるような共闘もあろう。問題ごとに区分して対応しなければならないのだ。

 

 そして今回、大事だったのは、防衛財源確保法では、野党は反対で一致していたことだ。れいわはこの法案の採決前の不信任案だったら賛成したと明言しているし、国民の玉木氏も野党全体をまとめる努力をするべきだ」と述べているのだから、野党みんなが反対している防衛財源確保法をめぐってもう少し賢いアプローチをしていれば、今国会での野党の協力を印象づけられたはずだ。

 

 しかも、財源が明確でないことで、自民党内にも不協和音があった。先送りすれば選挙が近づいてきて、当選に響く可能性があるのだから、そこをどう利用するかが、野党の知恵の見せ所だったと思う。

 

 ところが、共産党は「悪政四党連合」批判が基準になってしまって、せっかく防衛財源法案では協力できるのに、ただただ維新と国民を批判するだけだった。立憲は、本音ではこの法案に反対できないと考えていたのが、れいわの声明がいうように腰砕けだった。せっかく一致しているのに、これをどう生かし、どう政権を追い詰めるのに使うのか、考えぬく政治勢力は存在しなかった。

 

 一方で不信任案のように内容ははげしいが少数しか結集できない課題。他方で多くが結集できる課題。これをどう組み合わせていくのか。現在の複雑な野党状況下で頭を使うことが求められている。(了)