(2)本件不開示決定に対する審査請求人の認否・反論

 本件不開示決定に対して、以下のとおり反論する。

ア 「あなたからありました保有個人情報の開示請求についてお答えします。」について

(ア)本件不開示決定は、審査請求人が2023年4月25日付けで行った複数の保有個人情報の開示請求(①党中央委員会幹部会委員長に対する開示請求と、②党京都府委員長及び党京都南地区委員長に対する開示請求)のうち、いずれの開示請求に対する決定なのかを特定できる情報が明記されておらず、認められない。

 本件不開示決定については、後記ウに記載したとおり「請求内容の(1)〜(4)について」との記載があることから、①党中央委員会幹部会委員長に対する保有個人情報の開示請求についての決定である事実が推定されるが、いずれの開示請求に対する決定なのかを特定できる情報を明記した上で、改めて開示決定をするよう求める。(具体的には、当該部分を「あなたが2023年4月25日付けで日本共産党中央委員会幹部会委員長に対して開示を請求した保有個人情報については、以下のとおりお答えします。」などと変更し、改めて開示決定をするよう求める。)

(イ)不開示とした理由の記載のない不開示決定は、認められない。

 審査請求人は、後記イないしキに記載した理由により、本件不開示決定は認められず、改めて本件対象保有個人情報を特定し、全て開示するよう求めるものであるが、仮に、本件不開示決定を維持するのであれば、上記4(1)アに記載した個人情報保護法第3条の規定、上記4(1)イに記載したプライバシーポリシー及び上記4(1)オに記載した最高裁判所の判断(保有個人情報の不開示決定という「不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは(略)処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。」)に基づき、

①  保有個人情報に該当する資料をそもそも作成・取得していない、もしくは

②  作成したが保存期間が経過したので廃棄した、

 などの不存在の理由を付記し、改めて開示決定をするよう求める。

イ 「ご承知のように日本共産党は個人情報保護法第57条により適用除外になっております。」について

 「日本共産党は個人情報保護法第57条により適用除外になっております。」との回答は、上記4(1)アに記載したとおり、個人情報保護法は政治団体に対して同法の全ての規定について適用を除外しているわけではないこと、及び上記4(1)イに記載したとおり、党は個人情報保護法第57条第3項の規定に基づくプライバシーポリシーにおいて、「個人情報保護に関する国内法令・規則を遵守します。」と規定している観点から、認められない。

 個人情報保護法の規定が適用される(すなわち、適用除外とされていない)第3条の基本理念に基づき、改めて上記4(1)ウに記載した個人情報の定義に該当する本件対象保有個人情報を特定し、開示するよう求める。

ウ 「ただし、請求内容の(1)〜(4)について、あなたの請求内容についての日本共産党の見解は次のようになりますので、それをもってお返事とします。」について

 上記4(1)アに記載したとおり、個人情報保護法第33条第2項は開示請求に係る保有個人情報の開示義務を定めていること、及び上記イに記載した趣旨に基づき、「あなたの請求内容についての日本共産党の見解は次のようになりますので、それをもってお返事とします。」との取り扱いは、認められない。

 なお、個人情報保護法第33条第2項は、同項が規定する不開示情報のいずれかが含まれている場合は「その全部または一部を開示しないことができる。」と規定しているが、本件不開示決定において不開示情報に関する記載は存在しないことから、本件対象保有個人情報の全ての部分を開示するよう求める。

エ 「(1)に関しては、党規律委員会が受け取った「処分報告項目例」などの関連資料のうち、あなたの個人情報に関わる部分はすでに「しんぶん赤旗」などで発表されているもので、それ以外に個人情報に該当するものは保有していません。」について

(ア)「あなたの個人情報に関わる部分はすでに「しんぶん赤旗」などで発表されている」という事実については、認める。

 しかし、「あなたの個人情報に関わる部分はすでに「しんぶん赤旗」などで発表されている」という事実があったとしても、そのことのみを理由として、本件対象保有個人情報を開示しないという取扱いは、認められない。

 上記4(1)ウの引用部分の事例7に記載したとおり、新聞、ホームページ及びSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)等で公にされた特定の個人を識別できる情報は、個人情報に該当する。審査請求人の個人情報が記載されている「しんぶん赤旗」記事、ホームページ及びSNSへの投稿等を全て特定し、開示するよう求める。

(イ)本件不開示決定において、党中央委員会書記局は、「党規律委員会が受け取った「処分報告項目例」などの関連資料」を保有している事実を認めている。

 上記イ及びウに記載した趣旨に基づき、「党規律委員会が受け取った「処分報告項目例」などの関連資料」についても、全て開示するよう求める。

(ウ)「それ以外に個人情報に該当するものは保有していません。」という事実は、認められない。

①  上記4(1)エの(ア)ないし(ウ)に記載したとおり、情報公開審査会は、以下のaないしcについても、保有個人情報に該当するとの判断を示している。

a.   当該文書の作成目的等を考慮し、当該文書に記載された情報を他の情報と照合することにより、審査請求人を識別することができる情報

b.   審査請求人自身が答弁した内容や対応した事実に関する情報など、審査請求人と密接に関係のある情報

c.   審査請求人に対して質問し審査請求人が答弁したことを質問てん末書に取りまとめたことに関する記載

 「党規律委員会が受け取った「処分報告項目例」などの関連資料」の中には、上記aないしcに記載した保有個人情報が存在していると考えるのが、経験則上自然である。

②  審査請求人の個人情報が掲載された「しんぶん赤旗」記事、ホームページ及びSNSへの投稿の中には、審査請求人の除名処分を決定・承認した党京都南地区委員会及び党京都府委員会の会議録に該当するものは存在しない。

 しかし、党規約第55条において、被除名者による「再審査の求め」に関する手続を規定している以上、党中央委員会幹部会は、当該会議録を保有していると考えるのが経験則上自然である。

 仮に、党中央委員会幹部会が当該会議録を保有していないのであれば、党中央委員会幹部会は、党規約第55条に基づく被除名者による「再審査の求め」において、審査請求人の主張に反論するための根拠となる資料を保有していないということになる。

 なお、会議録については個人名を匿名化し、例えばMなどと記載している可能性もあるが、上記4(1)エ(ア)に記載したとおり、他の情報と照合することにより本人が識別できる情報は、保有個人情報に該当する。また、上記4(1)ウの引用部分の事例4に記載したとおり、当該会議録を作成するために使用された音声録音情報についても、本件対象保有個人情報に該当する。

③  後記オないしキに記載したとおり、審査請求人が開示を求めた保有個人情報の(2)ないし(4)についても、本件対象保有個人情報に該当する。

オ 「(2)「運用マニュアル」なるものについては、個人情報に該当しないので、その有無をふくめて回答の必要はないものと考えます。」について

(ア)「「運用マニュアル」なるものについては、個人情報に該当しない」との説明は、認められない。

 審査請求人が開示を求めた保有個人情報の(2)は、「党員の処分に関する規約の運用マニュアル(私に対する処分について、いかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって除名処分が選択されたのかが分かる資料)」である。

 上記4(1)オに記載した最高裁判所の判断に基づけば、審査請求人に対する除名処分においても、「処分基準の適用関係が示されなければ」「いかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって当該処分が選択されたのかを知ることは困難である」と言える。

 したがって、審査請求人が開示を求めた保有個人情報の(2)は、本件対象保有個人情報に該当する。該当する保有個人情報を全て開示するよう求める。

(イ)「その有無をふくめて回答の必要はないものと考えます。」との説明は、認められない。

 本件開示請求は、保有個人情報の開示を求めるものであり、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)第8条[1]の規定を準用したかのような「有無をふくめて回答の必要はない」との主張は、失当である。

 個人情報保護法第16条は、「存否が明らかになることにより公益その他の利益が害されるもの」(例:①本人又は第三者の生命、身体又は財産に危害が及ぶおそれがあるもの、②違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがあるもの、③国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあるもの、④犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障が及ぶおそれがあるもの)[2]を保有個人データの対象外としているが、審査請求人が開示を求めた保有個人情報の(2)は、「存否が明らかになることにより公益その他の利益が害されるもの」には該当しない。

カ 「(3)については、用語の定義であり、個人情報には該当しません。」について

 「(3)については、用語の定義であり、個人情報には該当しません。」との説明は、認められない。その理由は、上記オに記載したとおりである。審査請求人が開示を求めた保有個人情報の(3)に該当する保有個人情報を全て開示するよう求める。

キ 「(4)「再審査の求め」に関しても個人情報に該当しませんが、除名に関しての再審査については、被除名者がいかなる書式で提出しようと再審査の対象になることは申し添えておきます。」について

(ア)「(4)「再審査の求め」に関しても個人情報に該当しません」との説明は、認められない。その理由は、上記オ(ア)に記載したとおりである。審査請求人が開示を求めた保有個人情報の(4)に該当する保有個人情報を全て開示するよう求める。

(イ)「除名に関しての再審査については、被除名者がいかなる書式で提出しようと再審査の対象になることは申し添えておきます。」との説明については、認める。

 上記4(1)オに記載したとおり、処分理由を審査請求人に知らせることは、「不服の申立てに便宜を与える趣旨」であるとすれば、「除名に関しての再審査」の手続を教示することも、「不服の申立てに便宜を与える趣旨」として、保有個人情報に含まれると考えられる。

 したがって、「除名に関しての再審査については、被除名者がいかなる書式で提出しようと再審査の対象になる」ことを規定した資料は、審査請求人が開示を求めた保有個人情報の(4)に該当する。当該保有個人情報を全て開示するよう求める。

5 本件審査請求に当たっての審査請求人の意見及び回答を求める事項

(1)本件不開示決定において、私(審査請求人)に関する個人情報はすでに「しんぶん赤旗」とホームページに掲載したものが全て、というのが回答の基本となっている。

 そうであるならば、

ア 上記4(2)エ(ア)に記載したとおり、「しんぶん赤旗」とホームページのどの記事かを特定して示すよう求める。

イ これまで「しんぶん赤旗」とホームページに掲載されたもののなかには、除名を決定・承認した党南地区委員会及び党京都府委員会の会議録を思わせるようなものは存在していない。そうすると、会議録は存在していない(①そもそも会議録を作成する理由がなく作成されていない、②作成したが廃棄した)ということか否か、回答を求める。

(2)2023年2月2日に実施された私に対する除名処分に関する調査において、党京都南地区委員長は調査に関する手持ち資料を保有していた事実がある。当該資料は、上記4(2)エないしカに記載した保有個人情報に該当すると考えるのが経験則上自然である。当該資料(当該資料の作成に当たって党京都南地区委員長等から送付された検討中の案及び関連資料を含む。)のうち、保有個人情報に該当する部分を全て開示するよう求める。

以上

 


[1] 情報公開法第8条(行政文書の存否に関する情報)開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、行政機関の長は、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。

[2] https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a2-7