では、朝鮮戦争は北朝鮮の侵略だったと、共産党の見解がそう変わったのはいつか。公式には、88年9月8日に公表された「朝鮮問題についての日本共産党中央委員会常任幹部会の見解」であるとされる。そこに、「(北朝鮮が)南部全面解放による朝鮮統一の立場から軍事行動をおしすすめた」ことが指摘されているからだ。

 

 ただし、いま引用した文章は、北朝鮮が武力で南を解放する方針を持っていて、実際に軍事行動を起こしたことを書いているだけで、北朝鮮が侵略したと書いているわけではない。本音がそこにあったことが明らかになるのは、翌年3月11日付の「赤旗」であり、そこでようやく「(昨年9月8日の見解は朝鮮戦争が)北の計画的な軍事行動によってはじめられたものであることを明らかにし」「アメリカの朝鮮への侵略だとする従来の主張を改めた」ものだとされたのである。

 

 この結果、綱領の記述はさらに改定される。1994年の改定で、こう変わった。

 

「中国革命の勝利など、世界とアジアの情勢の変化に直面して、アメリカ帝国主義は、その目的を達するために、新しい手段をとった。1951年、ソ連と中華人民共和国を除いてサンフランシスコ平和条約がむすばれ、同時に日米安全保障条約が締結された。」

 

 「朝鮮戦争を機会に」という表現はなくなった。また、「社会主義の勢力の前進に直面して」など、社会主義への過大な表現もされていない。「中国革命の偉大な勝利」という言葉から「偉大な」は削除された。これらは意味のある変化である。

 

 しかしそれは、戦争する帝国主義と平和の社会主義という世界認識が変わったことを意味しなかった。61年綱領にはこういう記述がある。

 

「社会主義の世界体制、国際労働者階級、帝国主義に反対する勢力、社会の社会主義的変革のためにたたかっている勢力は、今日の時代における世界史の発展のおもな内容、方向、特徴を決定する原動力となっている。社会主義世界体制は人類社会発展の決定的要因になりつつある。世界史の発展方向として帝国主義の滅亡と社会主義の勝利は不可避である。」

 

 冒頭にあげられている三つの勢力は、ずっと「三大革命勢力」と呼ばれてきたものである。その勢力が帝国主義を滅亡させるというのが、旧綱領の世界観だったのだ。

 

 これが85年の綱領一部改定で変わるのだが、変わったのは3箇所である。一つは「社会主義世界体制」が「社会主義諸国」に、もう一つは「決定する原動力となっている」が「原動力となりうるもの」になり、さらに「原動力となりうるもの」に「反核・平和運動」が加わったである。

 

 この変化の意味と限界は次回に。(続)