先日、ある団体の機関紙を見ていたら、徴用工問題の特集が載っていた。なぜ日本には謝罪と賠償が求められるのか、なぜ今回の韓国側の解決策ではダメなのかが論じられていた。

 

 その主張の中心は、徴用工は強制されたものだというもので、1944年の徴用令の朝鮮人適用などを引用して批判する。一方、すでに解決済みだという立場をとる人は、徴用令が韓国人に適用される以前は、そもそも徴用など存在せず、企業や政府の募集に韓国人が応じただけだと批判するわけである。徴用令についても、戦時の徴用は「当時、日本国民だった者たちに対して合法的に行われたもので、......決して強制連行や奴隷労働ではなかった」(西岡力「安部総理に教えます 韓国の無法とこう戦え」『月刊 Hanada セレクション 韓国、二つの嘘 徴用工と従軍慰安婦』所収)と述べ、「強制」であることを否定する。

 

 しかし、現在問題になっている裁判では、「強制連行」だったかどうかは焦点になっていない。 大法院判決では、判決の事実認定の部分のタイトルは「日本の韓半島侵奪と強制動員など」と、「強制動員」の言葉が使われているから、中身を読まないと原告がそう主張しているし、裁判もそういう事実認定をしていると思いがちなのだが、読んでみるとまるで異なっている。

 

 新日鉄住金事件でも、ある原告は1943年9月、「(旧日本製鉄の)広告をみて技術を習得して 我が国で(韓国のこと──引用者)就職することができるという点にひかれて応募し、......面接 して合格し、......訓練工として労役に従事した」と述べている。別の原告は41年、「大田市長の推薦を受け報 国隊として動員され、旧日本製鉄の募集担当官の引率によって日本に渡り、......労役に従事した」とする。 もう一人の原告も四三年一月頃、「群山部(今の群山市)の指示を受けて募集され、旧日本製鉄の引率者に従って日本に渡り、労役に従事した」のである。

 

 以上がすべてだ。判決本文では一人も「強制動員」の事実が認定されていないのである。原告はもしかしたら「強制的に連行された」と主張したのかもしれないが、判決ではそれは採用されていないのである。

 

 それなのに、な、原告が謝罪と賠償を求めるのか、大法院がそれを認めたのか。そこのところをちゃんと判決文を読まないと、ズレたままになってしまう。