すでにネットではこの画像が出回っているが、共産党はこの二つを関連させて論じることを基本路線においているようだ。本日は徴用工問題はお休みして、この問題を論じてみよう。

 

 このやり方は、苦肉の策として導き出したものだろうが、動機としては悪くない。「松竹問題」ではメディアからの批判も強く孤立してしまった感があるので、「大軍拡」と関連させれば攻勢的に論じられるかもしれない──そんな意図から生まれたものであると思われる。

 

 もう少し敷衍して説明するとこうなる。いま、岸田政権など権力が総がかりで大軍拡を進めており、世論総出で批判しなければならないときである。共産党はその批判の中心にある。メディアがいま「松竹問題」を取り上げることは、軍拡批判の中心にある共産党を批判することであって、ひいては軍拡を進める権力を助けることに他ならない。「松竹問題」は、そういう権力の意図と無縁に論じられてはならない。だから、「松竹問題」を選挙戦で大いに論じることは、権力の大軍拡と正面から闘うことに他ならない。こんな感じだろうか。

 

 なんでも権力の意図と結びつけて論じれば、反権力の側の支持は得られるというのは、古い世代ではそれなりに通用するのだと思う。古い世代が考えつきそうなことである。「動機としては悪くない」とはそういう意味だ。

 

 しかし、そんなやり方では、少なくとも50代以下には受け入れられない。だから、「若い世代・真ん中世代」向けの説得が必要となっているのが、現在の党の実情であろう。中祖さんがどう説明するのか注目である(この講演動画を録画された方は、是非、私にも提供してほしい)。

 

 共産党が気をつけなければならないのは、権力の意図と結びつけるやり方は、論者の水準次第では、実際に権力と私がつるんでいるかのような話になって、証拠のない虚構としてかえって批判される場合があることだ。2月19日、市田副委員長が京都の長岡京市でやった演説で、私が日本記者クラブで講演したり、文藝春秋社から本を出したことをそういう脈絡で語ったのも、権力と私がつるんでいたら話に説得力が出るという「勢い」から生まれたものだろう。

 

 それが勢いついでの話どころか、本当の話になってしまったのが、伊藤岳参議院議員が2月末、埼玉で行った演説である。これもネットで出回っている。こんな話をしたそうだ。

 

 「もし共産党がそんな(松竹の言うような)政策論に変わっちゃったら岸田大軍拡と戦えないですよ。取り込まれちゃいますよ。

 そこに目をつけたのが今の権力側なんですね。共産党の中にいる松竹伸幸という人の主張に目をつけて本を出さないか、雑誌のインタビューに応じないか、いろいろ攻勢をかけていたことが明らかになりました。彼はそれに応じて本を出しました。」

 

 私が権力から本を出さないか、雑誌のインタビューに応じないかと働きかけを受けたことになってしまっている。その「権力」っていったい誰のことですか。そう聞いても答えられないようなことを、仮にも国会議員という役職にある人が平気で発言する。それがいまの共産党なのだ。

 

 私が愛してきた共産党がそんな水準なのかと思うと、本当に哀しい。