この数か月間、共産党の問題しか論じなかった。昨日書いたように、その問題を論じなくなるのは統一地方選挙の告示日から投票日までの間なのだが、徴用工問題は大事だし、間違って理解している人も少なくないので、私の考え方をまとめて述べておきたい。

 

 徴用工問題をきっかけに日韓関係が戦後最低と言われる状況になって、誰もが解決を望んでいたと思う。その点で、とにもかくにも韓国側から解決策が示され、日本側もそれを歓迎するということで、これでなんとなかってほしいと多くの人が思っていることだろう。私とて、そうなればいいなとは思う。

 

 実際、今回の徴用工問題の解決策は、結局は破綻に至った2015年の慰安婦問題の合意と少し異なる点があることは、少し期待を抱かせる要素ではある。二つの点で異なると思う。

 

 1つは、慰安婦合意は、朴槿恵政権を一方の当事者とするものであったが、翌年には別の問題で政権の求心力が失われ、16年5月には合意反対を掲げた文在寅政権が誕生して、最終的に葬り去られることになった。それに対して、今回、尹錫悦は誕生して一年も経たないので別の政権が葬り去ることはないし、そもそも韓国側独自の解決策なので、日本の態度が問題だということを口実に葬り去ることのできない性格のものでもある。

 

 もう1つは、慰安婦合意は、それに反対する挺対協(現在の正義連)が、いまでは明らかになったように、慰安婦の人権を守ることを掲げてはいたものの、実際にはかなりイデオロギッシュな運動を展開し、何らかの妥協による合意を導くのが難しかった。今回の徴用工問題でも、いろんな市民運動が支えになっているようであるし、妥協に反対する声も強いけれども、挺対協の比ではないように思われる。

 

 だから、私もなんとかなってほしい派ではある。しかし、これで少しは前向きな動きが出て来ることはあっても、それは長くは続かないと思う。

 

 それは韓国最高裁が日本企業に求めた賠償を、日本企業が払わず韓国側が肩代わりして、判決がそのまま履行されないからではない。そうではなくて、今回の判決が求めている核心部分が、韓国側の解決策ではまったく無視されているし、日本側の対応策にも入っていないからである。

 

 日韓関係から生じるこの種の問題をめぐっては、65年の日韓条約と請求権協定で解決済みという日本側と、いや国家がそういう合意をしても個人の請求権は残るという韓国側(プラス日本の市民運動)が対立するというのが、これまでの構図であった。そのため、今回の徴用工問題も、同じ構図で捉えている人が多い。しかし、今回に問題になっているのは、まったく新しいことなのである。それが理解されていない解決策は、どうやっても解決策にはならないのである。

 

 ということで、その新しい問題を明日から書いていく。(続)