昨日、今月のメルマガへの寄稿文をアップしましたが、そういえば先月分も私が書いていて、アップするのを忘れていました。話題の『志位和夫委員長への手紙』をはじめ、昨年末刊行の『共産党100年—理論と体験からの分析』などをまとめて紹介したものです。『志位和夫委員長への手紙』は4刷りになり、『共産党100年—理論と体験からの分析』も2刷りで順調に売れています。このメルマガ記事を書いたときは、いまのような局面が生まれることは想定していませんでした。どんな気持で出版したのか、私の当時の気持が伝わるかと思うので、あえて時期遅れですがアップします。

 

 

 今月、『志位和夫委員長への手紙』を刊行します。サブタイトルは「日本共産党の新生を願って」。著者は鈴木元氏で、60年の党歴を持ち、京都で200名を超えて最大規模の共産党単位後援会の会長をしておられます。

 

 鈴木氏からこの本を刊行したいと相談があったのは、昨年の夏、参議院選挙のあとだったと思います。その前年の総選挙に続く後退を喫した共産党を見て、このままでは共産党が取るに足らない政治勢力に落ち込んでしまうかもしれないと感じ、それは日本の政治、社会の現状からあってはならないことだとして、是非、共産党のあり方について提言をしたいとのことでした。

 

 ちょうど同じ時期、昨年11月末に刊行した『共産党100年—理論と体験からの分析』を刊行したいとの相談がありました。これは、有田芳生氏と3人の新進気鋭の経済学者(森田成也氏)、政治学者(木下ちがや氏、梶原渉氏)が執筆するもので、著者の共産党との関係はみんな違うのですが、一つの共通点がありました。それは、昨年5月に刊行された『日本共産党—「革命」を夢みた100年』(中北浩爾、中公新書)に刺激され、共産党の危機は日本社会の危機であって、なんとか打開しなければならないという強い意思を著者全員が持っていたことでした。

 

 私も似たような気持ちを持っていたので、この2つの著作の刊行を引き受けることにしました。後者のほうは共産党100年史の分析を関わっていましたので、100周年の昨年中に刊行し、前者の鈴木氏の著作は今月となりました。同じような問題意識の本ですが、鈴木氏の著作の独自の特徴は、以下の帯の文章があらわしています。

 

 「党歴60年の古参党員からの直言—貴方はただちに辞任し、党首公選を行い、党の改革は新しい指導部に委ねてほしい。」

 

 このメルマガ読者のなかには、あまりに行き過ぎた言葉ではないかと、違和感をもって受け止める方もいると思います。そのご批判は受け止めます。しかし、この言葉の激しさは、共産党の後退をなすすべもなく放置していては、日本の政治が最悪の状態に陥ってしまいかねないことへの、著者の危機感の大きさの反映だと理解してもらえればと思います。あるいは、共産党を立て直し、影響力をもった大きな党にする以外に、日本社会を立て直す道筋はないのだという、強い気持ちのあらわれだとも言えます。

 

 鈴木氏はこの著作のなかで、共産党をめぐるさまざまな論点に触れています。安保・自衛隊政策をめぐる問題、共産党に対して提言をしてきた知識人に対してとった態度の問題、そもそも科学的社会主義の理論にかかわる問題、その他これまで論点になってきた問題の網羅のようです。そのなかには、読者には受け入れがたい論点もあるでしょう。しかし、共産党の向かうべき方向を見いだしたいと思っている人は少なくないのですから、賛成か反対かは分かれても、活発な議論を興さなければならない問題だと思います。

 

 この本は、『日本共産党100年—理論と体験からの分析』とともに、そのための議論を促してくれるものです。是非、ご一読ください。

 

 なお、今月、共産党論をめぐって、別の出版社からも相次いで本が刊行されます。1つは、あけび書房の『希望の共産党—期待こめた提案』で、10人の知識人が共産党への希望を語りつつ、党首公選をはじめ、党のあり方を論じています(著者は、有田芳生、池田香代子、内田樹、木戸衛一、佐々木寛、津田大介、中北浩爾、中沢けい、浜矩子、古谷経衡)。もう1つは文春新書から刊行されるもので、私が書いた『シン・日本共産党宣言—ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由』です。いま共産党論がトレンドです。ご関心があれば手に取ってみてください。