中央までどんな機関にも意見を言えるというのは、昨日書いたように、義務的な性格のものではありません。それとは違って、もちろん党員ですから、意見を言うのは内部だけに限られる場合もあります。それが以下の規約第5条5項です。この「通知書」も最近の共産党によるキャンペーンも、この2つがごっちゃになっているように感じます。意識的に混同しているのか、規約に対する無理解なのか、それは分かりませんが。

 

「党の諸決定を自覚的に実行する。決定に同意できない場合は、自分の意見を保留することができる。その場合も、その決定を実行する。党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない。」

 

 そうなんです。共産党員は、自分で認めた綱領や規約、全国的な討議を経て決められた大会決定などは守らなければなりません。そして、そういう場合は、「決の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない」のです。

 

 しかし、党首公選に関する党の立場をどうするかは、また大会の決定にもなっておらず、全党員の民主的な討論にも付されていません。昨年8月24日の「赤旗」に一部局の論文が掲載されただけで、それが中央委員会で審議され、承認されたこともありません。少なくとも私は討議に参加したことがないし、除名問題で私を調査した4人全員に聞いたところ、あの論文の公表に当たって討議に参加した人は誰もいませんでした。ですから、「党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない」という性格のものではないです。その場合、党の綱領と規約、大会決定の範囲内のものであれば、外部に意見を発表することも問題ありません。

 

 『シン・日本共産党宣言』(文春新書)をよく読んでいただければ分かりますが、私は、党の安保自衛隊問題での見解を、どうやって綱領の枠内で発展させるかに腐心しました。志位さんが切り開いてきた道をどう前へと進めるかを考えぬきました。6年前に公表した『改憲的護憲論』(集英社新書)も、その一環のものですが、この際は処分などはされませんでした。

 

 『改憲的護憲論』では処分されず、『シン・日本共産党宣言』では除名になる。その違いはいまもって分かりません。異論が周辺で小さく起きている間は許容するけれど、その異論が党内に影響を持ち、正論になるかもしれない場合は、除名によってその芽を摘むのだということなのでしょうか。

 

 古い61年の党規約は、「党の内部問題は、党内で解決し、党外に持ちだしてはならない」として、異論を外に持ちだすことを禁止していました。党外に持ち出さないことは党員の義務だったのです。この規定は、現行の規約では「党の内部問題は、党内で解決する」(第5条8項)というだけとなり、「禁止」条項は削除されました。現行規約は、古い規約の「下級は上級に従い」とか「決定は無条件に実行する」などの規定を削除し、党内の上下関係をなくすとされ、「循環型」の精神でつくられたものであって、運用に当たってもその精神でが基準とされなければなりません。しかし、世の中で話題になる政治社会問題については、党の決定になっていなければ自由に意見を述べられるはずだし(党が決めていないから個人の意見は言わないでは社会で通用しない)、たとえ大会で決定された問題であっても、党の考えはこうだが自分はこうだとしつつ(個人の見解を外に出して)、その党を支持してほしいと言えなければ、ただただ党の立場はこうだとくり返すだけでは、有権者との心の通った対話は成り立ちません。

 

 以上の見地から、私はこの除名理由には納得できません。「被除名者が処分に不服な場合は、中央委員会および党大会に再審査をもとめることができる」という規約第55条にもとづき、来年1月の党大会に再審査を求めることとします。(了)