なんだか、大事になってきましたね。本日の「毎日新聞」です。おそらく本日の「夕刊フジ」にも載ります。

 

 さて、私をめぐる問題が大きく動きつつあり、この連載の規約問題が陳腐化する可能性があります。そこで、規約問題は来週の火曜日から新しい視点での連載を開始することとし、この連載では、あと2回、藤田論文の綱領論についてだけ書いておきたいと思います。

 

 藤田論文は、「綱領からの逸脱」に関して、見出しだけを見てもびっくりするような言葉でつづられています。「(松竹が)『安保条約堅持』と自衛隊合憲を党の『基本政策』にせよと迫る」「(松竹の)『綱領の枠内』という言い訳は通用しない」。

 

 まあ、普通の党員がこれを見たら、「松竹とはどんなひどい党員なんだ」「こんな本なんか読む必要ない」と思うことでしょう。藤田さんのねらいもそこにあって、悪罵を投げつければ投げつけるほど松竹は嫌われ、こんな党員は排除しようという党内世論が高まると思っているのでしょう。

 

 要するに、そこがねらいなので、論理性はどうでもいいのです。でも、その結果が重大です。2015年の野党連合政権の提唱以来、志位さんが営々と築いてきた野党共闘への努力は、この藤田論文でいっきょに崩れ去ることになりました。

 

 志位さんはほんとうに9条を愛する平和主義者です。志位さんが東大の学生だったころ、党組織では、9条について「現行憲法の反動的条項の一つ」だと教えていました。当時の党綱領では、「現行憲法は、…一面では平和的民主的条項をもっているが、…反動的なものをのこしている」と規定しており、9条はその代表格だと新入党者教育で教えていたのです。なぜかというと、その綱領では、戦後、一連の民主化措置がとられたけれど、「アメリカ帝国主義者はこれをかれらの対日支配に必要な範囲にかぎり」と規定していたからです。9条で軍備を制限したのも、「対日支配に必要」だからという論理です。

 

 志位さんは、そんな教育を受けながら、9条の理想への確固とした信念を培ってきました。そして、94年の第20回党大会でそれまでの党の「中立自衛」政策を大転換し、9条を将来にわたって堅持するという、現在の党の基本路線を打ち立てました。侵略されたら警察力と自主的自警組織で排除するのだと言い切ったのです。誇らしかったでしょうね。

 

 そんな志位さんが、22大会で「自衛隊活用」論をみずから報告せざるを得なくなった。どんなに悔しかったことでしょう。

 

 しかし、2015年の新安保法制成立直後、野党による国民連合政府を提唱して移行は、実質的にも党首になった志位さんみずからの判断で、安保・自衛隊に対する見解を発展させてきました。自衛隊活用論を復権させ、侵略されたら安保条約第5条を発動することも明確にし、政権に入れば自衛隊は合憲だとみなすというもので、安保廃棄と自衛隊違憲・解消が共産党の基本政策だと思っていたほとんどの党員が度肝を抜くことになります。

 

 そこまでして、志位さんは、野党の政権に入ろうとした。うまくいかなかったけれど、党首として判断して努力した。

 

 それなのに、藤田論文は、それらの努力を灰燼に帰するようなものです。専守防衛政策は憲法違反だと明確に言い切った「赤旗」記事なんか、これまで見たこともないのに、藤田さんは踏み込んだのです。

 

 これって、これまでの志位さんの努力と整合性がなくても、私を批判すことのほうが大事だから、何でも言ってやろうという気持があらわれたものです。この論文を見た他の野党は、共産党との政権共闘には見切りを付けることになるでしょう(国会共闘はするでしょうが)。まあ、自衛隊批判のキャンペーン紙である「赤旗」の藤田さんにとっては、そのほうがいいのでしょうけれど。(続)