これまで説明してきたように、意見の違いで第二事務が党員を監視することはない。最大の意見の違いを持っていた私が監視されなかったのだから、そこは断言できる。

 

 しかし、別の問題では、可能性がないとは言えない。意見の違いをもって分派をつくろうとする場合ではない。分派というのは、仲間をつくって、やがては結束して行動を起こすためにつくるものなので(連名での意見表明程度を「分派」扱いするかは間違いだが)、党中央としてはいずれオモテに出たときに処分をすればいいだけのことなのだ。

 

 そういう対処ができず、党に打撃を与えるのは、分派のように表面化せず、深く潜行してしまう場合のことである。いつまでも潜行したままだという場合である。そう、公安警察と接触したりして、スパイ行為にいたる場合のことだ。こうなると問題のフェーズは変わってこざるを得ない。

 

 1987年のことだが、当時の共産党宮崎県委員長が宮崎県警の警備当局から報酬を受け取ってスパイ行為をしていたとして、除名処分されたこともある。何十年もの間、情報を提供していたとのことだから、党に与えた損害は甚大なものだったと思う。

 

 昔と違って、現在はそんなにたくさんの事例があるわけではないだろうが、そういう事例がなくなったとまでは言えない。そのような現状で、共産党が何らかの防衛策をとるのは(とらないで良くなる時代が来てほしいとは願うが)、仕方のないことではないか。

 

 もし本当に第二事務に尾行されたという人がいるなら、そこを疑われたのだと思う。それを「意見の違いだ」と言えば、周りにはちょっとかっこ良く映るということになる。私の場合、志位氏との意見の違いは、ほかのどんな党員よりも深刻なものだったが、公安との接触もなくスパイ活動をしていたわけでもないので、まったく疑われなかったということだろう。

 

 なお、その種の防衛策を党がやっているとして、それを第二事務が主体になってやっているかどうかは、私は知らない。仕事の性格上、そこはどんなに聞いても誰も教えてくれなかったし、逆に、自分たちの仕事ではないということを当の第二事務の人から聞いたこともあるくらいだ。

 

 以上である。よって、私が党首になっても、第二事務は廃止しない。ただし、現在のような警備体制が過剰でないかということは、第二事務の仕事が激務であるだけに、よくよく検討しなければならないとは考えている。

 

 なお、連載の5回目で、なぜ幹部の防衛を特別に重視するかについて、事務所などと異なり「(幹部は)失ってしまったら取りかえしがつかない」からだと書いた。党首公選を求め立候補することを表明している私としては、「(お前も)失ってしまったら取り替えができない」人間かと問われると、「そうだ」と答える自信はない。党員が投票して決まったのだから、次の党首公選までは我慢してね、という感じだろうか。

 

 こうして、党首公選が定着して、党首は替わるものだという考え方も定着していくなら、幹部も「失ってしまったら取り替えができない」というものではなくなっていく可能性はある。そうなれば、第二事務の仕事も大きく変貌することになるだろう。(了)