だと思いますよ。何をやるために総理大臣になって、それをどう成し遂げようとしているのか、それがまったく伝わってこない。

 

 小泉さんだったら「郵政民営化」があって、自民党内に「敵」をつくりつつ、自分の意志を押し通していった。安倍さんは、「戦後レジームの転換」とかいろいろあって、反対勢力からの批判も多かったけれども、こういうことをやるために総理大臣になったのだということが伝わってきた(もちろん、あまり志のない人もいたけれど)。

 

 「信なくば立たず」って言うじゃないですか。政治的立場の違いがあっても、そういうものがないと、「敵ながらあっぱれ」という話になっていかない。

 

 岸田さんは、客観的には有利な立場にあるはずだ。だって、「黄金の3年間」を手にしたのだから。しかも、予想外の統一協会問題が勃発し、安倍派が撃沈気味で、意に沿った政権運営が可能になった。だから私も、何かをしかけてくるだろうなと身構えていたところがのだが、まったく期待外れである(外れたほうがいいのかもしれないが)。

 

 長く総理大臣を狙える絶好の位置にあったのだが、安倍さんという重しがあって、なかなか浮上できなかった。だから、安倍さんに協調して総理の座を禅譲してもらう路線を選択し、外相として安倍外交を支えたり(日韓慰安婦合意では安倍さんを説得して踏み切らせたが)、改憲にかじを切ったりした。そうしているうちに、自分でなければできないという志を失ってしまったのだろうね。

 

 唯一残っているように見えるのが「核兵器のない世界」。だがこれも、外相時代、オバマさんがせっかく核兵器の先制不使用に挑もうとしたのに、それを押しとどめる役割を果たしたりして、古い自民党政治と一体化してしまったので、それほどの見識をもって「核兵器のない世界」を掲げているようには誰も思ってくれない。

 

 やはり、政治家は信念である。政治の階段を少しあがろうかなと思っている私にも、いい教訓である。

 

 「信なくば立たず」。さあ、立てる日は来るかな。