宮本顕治は、たとえ排除されても、自分で食っていけるだけの能力があった。だから、自分で選んだ道をちゅうちょなく進んで行けたという要素があったと思う。

 

 その時代と比べて、いまの共産党の意思決定で大きな役割をもつ専従活動家は、若い頃からその道を選択したこともあり、排除された場合、別の仕事で収入を得ることが簡単ではない。私の場合だって、志位氏と自衛隊活用問題で意見が衝突したとき、退職しても大丈夫なように再就職先を探しておこうと考えざるを得なかった。志位氏とケンカして退職したとなれば、労働組合その他も雇ってくれないのは確実なので、それなりに苦労したのである。

 

 共産党の意思決定においては、専従者の役割が特別に大きい。中央委員の約200人は全員が専従者であり、党中央から給与をもらっている。もちろん、中央委員に選ばれるほどの人だから、党首などが間違っていると思えば、堂々と意見を述べる人たちばかりだとは思うが、それにしても自分が中央に給与面で依存していることは頭をよぎるだろう。

 

 他党の場合は、ここが違う。意思決定の中心にいるのは国会議員なので、党と衝突しても、議員給与を失うことがないのである。

 

 中央委員というだけではない。「最高機関」である党大会に代議員として参加し、次期大会までの方針を決定するのも、過半数は専従者である。党が公認権を持っている地方議員を加えると、7割ぐらいになるのではないか。

 

 大会に向けた代議員の選出では、基礎組織である支部は現場の党員を地区党会議の代議員として選ぶ。しかし、最終的に大会代議員を選ぶ都道府県党会議では、結局、その200人の中央委員をはじめ専従者が選ばれていることになる。そもそも大会のために1週間仕事を休める人は、そんなにいないわけだし。

 

 だから、大事だと思うのは、共産党の意思決定においては、専従者でない人の役割を高めることである。地域や職場で活動している人である。そういう人なら、別に上からにらまれても、収入の途を断たれることまでは心配しないで判断を下せる。

 

 中央委員会にしても、3分の2程度は、職業人で構成するべきだろうと思う(年金生活者でもいいけれど)。地方機関の場合も、専従者は実務面で献身的に党を支えつつ、政治的な決定を下す機関メンバーは、主力は職業人としたほうがいいのではないか。共産党には、専従者でなくても、豊富な人材がいるのだから。

 

 そうすれば、役職面でも、2000年の規約改正の際に不破氏が述べた「循環型」の党運営に近づいていくと思う。連載が「下」になったけれど、まだ終わらない。あと一回だけね。(続)