この問題に対する質問、意見でいちばん多かったのは、常任幹部会には書記局長を警告処分する権限があるのではないかということだった。お前はちゃんと規約を読んでいるのかと問い詰めるものもあって、そのコメントもアップしようと思ったが、やはり私には権限がなく、いつの間にか消えてしまった(私が寝ている間に削除されたのもあって、そういう場合は見ることさえできなくて、申し訳なく思っている)。そこで、この問題に言及しておきたい。

 

 中央委員の警告処分を常任幹部会単独でできるのか、中央委員会しかできないのか、その明文の規定は規約には存在しない。わずかに、「中央委員会の委員、准委員の権利停止、機関からの罷免、除名は、中央委員会の3分の2以上の多数決によって決定し、つぎの党大会で承認をうけなくてはならない」(第52条)とあって、私に質問してきた人は、それなら権利停止以前である警告処分は、中央委員会でやらなくてもいいように読めるではないかというのであった(それでも、常任幹部会でできるという明文規定はない。というか、規約に書いてある常任幹部会の権限は「常任幹部会は、幹部会の職務を日常的に遂行する」というあいまいなものだ。だから全権、全能を持つみたいな解釈が生まれる余地を残すのだろうけれど)。

 

 しかし、じゃあそれならば、なぜ筆坂氏のセクハラ問題のときに党中央の広報部が出した見解が、「(常任幹部会が警告処分を下したのは)常任幹部会の規律担当者の思い違いで、規約の規定によれば、党中央委員にたいする処分は、すべて中央委員会総会での決定を必要とするもの」としているかの説明がつかない。広報部の見解というのは、メディアを納得させなければならないので、間違ってはならないし、十分な説得力が求められる。党員だけを納得させればいい党建設委員会の論文とは違うのだ(納得させていないけれど)。

 

 この広報部の見解は、週刊新潮から10項目の質問が寄せられて広報部が回答したのに、その回答にはふれないで筆坂氏の文書が一方的に載せられたことへの抗議の意味合いがあった。そこで、同時に公表された広報部の回答にも目を通してみた。該当箇所はこうなっている。ちょっと長いけれど、どうぞ。

 

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「週刊新潮」編集部から日本共産党広報部に寄せられた質問と、同日おこなった日本共産党広報部からの回答」(2005年9月16日)

 

(1) 筆坂氏は「セクハラ」事件を理由に、2003年6月、政策委員長および国会議員を辞職しております。その経緯をお聞かせください。

 

 2003年6月、女性党員から党中央委員会に、筆坂氏からセクハラ被害を受けた旨の訴えがありました。常任幹部会として、必要な調査を行うとともに、筆坂氏を呼んで訴えが事実であるかどうかを確かめました。筆坂氏は、訴えの事実を認めるとともに、自己批判の文書を提出し、過去の問題にまでさかのぼって、自分のその弱点についての反省を述べました。その後開かれた常任幹部会会議でも、筆坂氏は、訴えられた事実を認め、自己批判を述べるとともに、いかなる処分も受ける旨、言明しました。常任幹部会は、こうした経過の上に立って、筆坂氏を党中央委員会から罷免するという規約上の処分を決定したものです。この処分は、幹部会を経て、中央委員会総会で決定されました。

 なお、議員辞職は、規約にもとづく処分ではなく、常任幹部会が道義上の立場に立って筆坂氏に勧告し、筆坂氏がこれを受け入れておこなったものです。

 

(2) 上記処分決定にあたり、共産党本部に1枚の「セクハラ」事件に関する「怪文書」が届き、それにより筆坂氏に対する処分が変更されたということはございませんか。

 

 常任幹部会は当初、ことが公表されたときに、被害者が受ける影響などを考慮して、常任幹部会の内部にとどめる処分とすることを確認しました。

 しかし、これは、常任幹部会の規律担当者の思い違いで、規約の規定によれば、党中央委員にたいする処分は、すべて中央委員会総会での決定を必要とするものであり、常任幹部会の内部にとどめる処分はありえません。そこで、次の常任幹部会で、(1)で述べた処分をあらためて決定しました。

 (以下、続く)

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 ここでも、「常任幹部会の規律担当者の思い違いで、規約の規定によれば、党中央委員にたいする処分は、すべて中央委員会総会での決定を必要とするもの」とされている。「処分は、すべて中央委員会総会での決定を必要とする」のだから、警告処分だって同じである。

 

 ではなぜ、冒頭に紹介した規約52条が、権利停止、罷免、除名に関して中央委員会の権限に言及しているのか。それは、52条を最後まで読んでほしいのだが、「中央委員会の3分の2以上の多数決によって決定し、つぎの党大会で承認をうけなくてはならない」からなのである。実際、筆坂氏の罷免処分は、第22回大会7中総(2003年6月24日)で決定され、会議後の書記局のコミュニケにも「総会は、筆坂秀世同志の党規律違反について報告をうけ、党規約にもとづく処分として筆坂同志を中央委員から罷免するという幹部会の提案を承認した」とある。

 

 通常、どんな団体でも、決定は過半数の賛成で有効になる。だから、警告処分は中央委員会の過半数が賛成すればいい。しかし、警告と比べて重い処分は3分の2の賛成が必要だ。それが52条が設けられている趣旨なのである。

 

 だから、いずれにせよ小池氏の警告処分は、次の中央委員会総会の議題にしなければならない。また、24年1月に開催予定の党大会でも議題にして決定しなければならないというわけだ。中央委員の方々には、活発な討議を期待したい。

 

 いま言及してきたのは、中央委員に対する処分だが、規約は処分一般に関する原則的な規定を行っている。「党員にたいする処分は、その党員の所属する支部の党会議、総会の決定によるとともに、一級上の指導機関の承認をえて確定される」(第50条)というものだ。その規定からも、小池氏に対する処分は、小池氏が所属する中央委員会の「総会の決定」の上に、「一級上」である党大会の承認が必要であるということになる。

 

 まだ、このブログのタイトルになっている「教訓」めいたことを書いていないので、さらに連載は続けたい。「続々」とか「続々々」になったりして。

 

 なお、連載の「中」で、田村氏が小池氏の威圧的発言を受け、「(小池氏の発言は)間違っていませんでした』と述べた」と書いたが、その出所はここである。(続)