昨日、国連総会は、ロシアがウクライナの4州を併合することに反対する決議を採択した。これまでで最多の賛成だということが評価されているので、それが分かるような数字をタイトルにした。

 

 前者が3月2日の最初の決議、後者が昨日の決議である。賛成、反対、棄権、無投票の順番である。3月2日は無投票だった2か国が、今回は賛成に回ったということであろう。

 

 わずかな差のように見えるが、この意味は大きい。それを知ってもらうためにも、ロシアの2014年のクリミア併合以来、国連総会がウクライナ問題であげた決議の変遷を、国連の文書検索システムで探したので、ここで示しておこう。

 

決議68/262(2014.3.27)「ウクライナの領土的一体性」

賛成100、反対11、棄権58、無投票24

決議ES-11/1 (2022.3.2)「ウクライナへの侵略」

賛成141、反対5、棄権35、無投票12

決議ES-11/2(2022.3.24)「ウクライナ侵略の人道的な影響」

賛成140、反対5、棄権38、無投票10

 

 そして今回の決議である。「ウクライナの領土保全、国連憲章の原則の擁護」というタイトルで、賛成143、反対5、棄権38、無投票10という結果だ。この変遷を見ると、いくつかのことが分かる。

 

 一つは、問題の始まりであるクリミア併合を批判する決議のときは、もちろん賛成が多数を占めていたが、現在と比べると、はるかに少ない。100か国だからね。でも、冷戦時代の70年代以前は、そもそもアメリカやソ連が侵略しても国連総会のテーマにすらならなかった。80年代になって、ソ連のアフガン侵略、アメリカのグレナダ軍事介入などがようやくテーマになるようになり、反対する決議も採択されるようになったが、それでも決議に賛成する国は100か国前後だったから、クリミア併合反対決議への賛同は、それ並ではあったということだ。

 

 その点では、現在のロシアによるウクライナ侵略は、はるかに国際社会の反対が多いことを示している。しかし、3月2日の決議と比べて、同じ3月24日の決議は、若干ながらも賛成が減り、棄権が増えていた。ロシアによる虐殺がテーマになったわけだが、西側諸国の憤激は大きかったものの、途上国のなかでは人道状況がテーマになってしまうと、自分に跳ね返ってくることもあるので、ちゅうちょが増えたわけである。西側は、ロシアの追い詰めるためにと思って虐殺問題をテーマにしたわけだが、それが必ずしも国際社会の結束を固めることにならなかった典型的な事例と言える。

 

 それと比べて、わずかではあっても過去最高の賛成となった今回の決議は、国際社会がすすむべき方向性というか、どうやったら団結できるのかを示していると思う。やはり、外国の干渉で自分の領土の一部分が失われるなんて、どの国であれ許されないことだから。

 

 でも、だからこそ、本来だったら、西側諸国には、台湾問題を抱える中国を賛成に回らせるというか、できれば共同提案国に加えるくらいの意気込みがあってしかるべきだったと感じる。昨日紹介した中国の「反分裂国家法」だって、「中国の主権と領土の分割は許されない。国家主権と領土保全の維持は……全ての中国人民共同の義務である」と、今回のウクライナ決議と同様、領土保全の重要性を謳っているのだからね。