先日、著者がお住まいになっている京都で開かれ、45名が参加されましたが、顔の広い著者なので東京でもありました。私は出張がてら、こちらに参加しました。鈴木元さんの『ポスト資本主義のためにマルクスを乗り越える』の出版記念会です。

 

 「『赤旗』に広告の掲載を拒否された本は売れる』という自然法則が働いて(もちろんその法則が働くように仕掛けをするからでもありますが)、順調に売れています。在庫が底を突きつつあるという感じでしょうか。マルクス専門家ではない人の本がこれだけ売れるのは、意外といえば意外ですが、理由はあるんですね。

 

 共産党員として60数年を生きてきた人が、しかも専従者として頑張ったこともある人が、党首公選の実施をはじめ真正面から党のあり方を問うという、それだけでも現代的なテーマの本です。なにせ、立命館大学の党を数十名(その低いほう)から四桁に近いところまでにした頃の党委員長です。当時、いまのように頻繁ではありませんが党勢拡大の月間が提起されることがあり、しかし大学の党にとっては月間よりも力を入れるべきことがらなどもあり、そういうときは指導に従わず月間には取り組まないのですが、しかしそのことで学生との結びつきはできるので、月間後半にはめざましい成果をあげるなどのこともあったそうです(それらの詳細はこの本ではなく次の本で出てきます。お楽しみに)。だから、上の言うことを聞かないヤツだったけれど、大事にされたわけですね。

 

 この本では、自分が60数年学び、信じ、指針としてきたマルクス主義を乗り越える格闘の様子が伝わってきます。マルクスやレーニンが批判の対象としているからということで、購入すらしなかった人々の本を70歳を過ぎて読み込み、考えるわけですね。プルードンとかトロツキーとか何十人もの著作です。そして、読みもせずに批判を鵜呑みにしていた自分を自己批判し、著者なりの結論を導き出していく。あるトロツキストの方からも好意的な評価をいただきました。

 

 自分を疑うって、人が成長しようと思えば、どうしても必要な段階です。自分は正しいと思ってしまえば、違う価値観のものを吸収しようという気持にはなりませんから。共産党の場合、自分は正しいということを有権者に訴える組織なので、余計に難しいことです。

 

 でも、そこを乗り越えなければならないところに、いま共産党は立たされているのだと思います。だから、この本は売れているのですね。

 

 「赤旗」の広告掲載拒否と言えば、聽濤弘さんの『〈論争〉地球限界時代とマルクスの「生産力概念』もあります。「かつて常任幹部会委員だったものは、共産党の決定と異なることを一言一句書いてはならない」なんて、いつまで共産党の組織原則として通用するんでしょうか。