連日になりますが、出版のことです。聽濤弘さんの『〈論争〉地球限界時代とマルクスの「生産力」概念』が書店に並びはじめました。

 

 昨年、同じ著者で『マルクスの「生産力」概念を捉え直す』を刊行しました。そうしたら反響が大きかったのです。

 

 『「人新世」の「資本論」』で話題の斉藤幸平さんが対談に応じてくれて、名古屋で活発な議論が行われました。その後も現在まで、聽濤さんとの間で理論的な交流があるのです。

 

 また、いわゆるマル経「宇野派」の重鎮として有名な柴垣和夫さんが、同派の雑誌「政経研究」に長い書評を書いてくださいました。もちろん、埋められない理論的な違いはあるのだけれど、現在の野党共闘の時代にふさわしく、理論面でも何らかの共同が進むことへの期待が表明されています。「政経研究」の次の号には、柴垣書評に関する聽濤さんのリプライが掲載されるなど、少し前には考えられなかった進展もありました。

 

 もちろん、いわゆる「正統派」からも反応がありました。すべてを書くことはしませんが、雑誌での書評はもちろん、研究会が旺盛に開かれ、賛否が入り乱れて議論がされています。その一環として、月刊「経済」の友寄英隆元編集長との間で、何回もの書簡のやり取りがされました。

 

 わたしが共産党に近づいた40年前頃は、マルクス主義陣営内部で、活発な論争がされていたと思います。社会構成体論争とか民主集中制論争とかは有名ですし、革命論をめぐってもいろいろありました。

 

 それが、ここしばらくの間、ピタッと途絶えているように感じます。論争なしに、特定の人の見解をただただ持ち上げる傾向も見られます。

 

 そういう中で、久しぶりに論争が巻き起こったので、とてもうれしくなってつくったのが、この本です。帯には、「マルクス主義の議論が活性化している」と付けました。もっと活性化することを望みます。

 

 ところが、やはりと言うべきか、本日の「赤旗」に冒頭のような広告を載せようとしたのですが、聽濤さんの本は掲載拒否でした。まあ、予想通りです。

 

 「論争を忘れた共産党」ということで、この時代、やっていけるんでしょうか。昨日の寂聴さんの対談に続いて、この本もアマゾンでは1〜2か月待ちです(週明けすぐに入りますのでご心配なく)。読者も論争を望んでいると思うんですけどね。

 

 「論争は、共産党の門前で立ちすくむ。門の奥、高邁な理論が純化する」。お後がよろしいようで。

https://www.amazon.co.jp/%E3%80%88論争〉地球限界時代とマルクスの「生産力」概念-聴濤-弘/dp/4780312310/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&crid=FDVCRF6LHHA6&keywords=論争+地球限界時代とマルクスの生産力概念&qid=1659177295&sprefix=論争+地球限界時代とマルクスの生産力概念%2Caps%2C283&sr=8-1