「もふもふ」さん、操作を間違ってコメントを消したかもしれません。大事なコメントでしたし、再投稿していただければありがたいです(大事かどうかにかかわらず全部アップしていますけれど)。さて、党首公選ネタが続くと重たいので、ちょっと別の話題も。

 

 いまの日本政治を見ると、「死せる孔明、生ける仲達を走らす」の故事が思い出される。亡くなった安倍さんの威光がまだ深く残っていて、現実政治に影響を与え続けているからである。岸田首相だけでなく左翼陣営までみんなが走っているようだ。 

 

 岸田さんが「国葬」を決めたのも、亡くなったのが安倍さんだからこそだろう。参議院選挙の結果を見ても、維新の躍進とか参政党の出現とか、右派の進出がめざましい。安倍さんを強固に支持してきた右派中の右派が、いま行き場を探しているわけである。維新は岸田さんが首相になって以来、そういう層を獲得する戦術をはっきりと採用して、自民党批判を強めてきた。そしてそれが成功した。

 

 その結果を見て、岸田さんは、安倍支持層を自民党の枠内に留めておくことを決断した。そのための国葬だと思われる。功績がどうだとか、民主主義を守るとか、それらしい理屈は付けているけれど、狙いはそこにしかない。それくらい安倍さんの影響力はまだ大きいということだろう。

 

 一方、国葬に反対する陣営も、過去の安倍さんに縛られているように見える。念のために言っておけば、私も国葬には反対する立場であるが、反対陣営が掲げている理由が、結局は「安倍さんだから」みたいに聞こえてしまうのである。

 

 いや、そんな言い方はしていないよ。でも、例えば「政治家としての功績に賛否が分かれる」という理由があるが、それってでは「賛否が分かれない政治家っているのか」という問いに行き着いてしまう。選挙で政権を争い、「あの人の政権ではなく私の政権を」と訴えるのだから、そんな政治家は存在しないはずなのだ。それだったら、安倍さんの国葬に反対ということを理由にするのではなく、「そもそも政治家を国葬にすること自体が問題である」ということになっていかないと、説得力に欠けるだろう。

 

 ただ、総理大臣というのは、選挙では他の党派を相手に闘っても、総理職自体は、日本国民を代表するような性格がある。だから、自分の党派の支持者だけではなく、他党派の支持者をも取り込むような政策なりアプローチをすることが求められる。そういう総理大臣の出現はが待たれるところである。

 

 安倍さんは、左翼的な党派が嫌いで、国会の議論の場でその態度が隠しようもなくオモテに出るので、関係者には蛇蝎の如く嫌われていた。しかし、国民の目線からすると、日韓慰安婦合意や戦後70年談話に見られるように、かなり中間派や左派にも目配りをしてきた。他党派の支持者を取り込もうと努力したのである。だからこその長期政権だった。

 

 そして、そのギャップが安倍さんの長期政権を支えたいちばんの理由だったと思う。左翼的党派の安倍さんへの批判の言葉が(内容も言い方も)、安倍さんに納得する中間派や左派に響かないのである。

 

 いまの国葬をめぐる議論を聞いていると、その構図が9月27日まで再現されそうだ。国政選挙6連敗を生んだ構図である。死せる晋三の影響力はあまりにも大きい。(続)