参議院選挙の結果は想定通りなので、何か書くことがあるかもしれまいが、私としては予定の行動に踏み切る準備を加速するだけである。さて、どうなることやら。

 

 それよりも、安倍氏に対する銃撃事件のメディアの取り上げ方の問題である。政党の臨み方にも関係する。もっと冷静にというか、事実をふまえて議論されないと、おかしな影響を与えてしまうのではないか。

 

 今回の事件を「テロ」と捉える政党、メディアが多い。その結果、言論や民主主義が暴力に押しつぶされてはいけないという大合唱が起きている。しかし、テロの定義次第という要素もなくはないが、今回の事件はどの角度から見ても、テロには当たらない。例えば、日本の法律に規定されているテロの定義を見てみよう。

 

「テロリズム(広く恐怖又は不安を抱かせることによりその目的を達成することを意図して行われる政治上その他の主義主張に基づく暴力主義的破壊活動をいう。)」(警察庁組織令第39条)

「テロリズム(政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう。)」(特定秘密の保護に関する法律第12条第2項)

 

 ここから明らかなように、テロというのは、常識的に2つの要素で構成されると考えてきた。1つは、「政治上その他の主義主張」があることである。もう1つは、「社会に不安や恐怖を与える行動をとる」ということである。

 

 今回の銃撃事件は、警察の初期の発表時点から、容疑者が「政治上の主義にもとづくものではない」と供述しているとされてきた。だから、それだけでもテロの定義から外れるのである。なのになぜテロだテロだとメディアは騒いだのだろう。

 

 もしかして、元総理を殺害することで、「社会に不安や恐怖を与える行動をとる」ほうに該当すると思ったのかもしれない。しかし、テロがなぜ「社会に不安や恐怖を与える行動」になるかというと、不特定多数の人々を殺傷することがされるからである。

 

 分かりにくいかもしれないが、普通犯罪は、誰を標的にするか明白である。親を殺されたとか、財産を奪われたなとの犯罪があって、その犯罪を犯した人を憎み、逆に相手に凶行を加えるのだ。だから、相手は特定されている。

 

 けれども、テロは、政治上の主義主張を広めることに目的がある。特定の個人を恨んでいるわけではないので、その個人を殺害するような手法にでることはなく、飛行機をまるごと乗っ取ったり(乗客には何の責任もないのに)、無差別に乱射して殺害したりするのである。

 

 今回の事件は、政治上の主義がない点でも、標的が特定の宗教団体に関係のある安倍元総理にしぼられていた点でも、テロとはいえない。宗教団体と安倍氏の間に殺すほどの関係があったかどうかは別にして。

 

 それをテロだと主張することによって、安倍さんの政治的主張を封じ込めるための犯罪だ、みたいな雰囲気が醸成されてしまったのではないか。メディアには猛省を促したい。