現状から抜け出すのは簡単ではないと思うが、一つ明るい要素がある。今回の自衛隊活用論は、志位さん自身が考えて打ち出していることだ。

 

 2000年の22回大会で打ち出された自衛隊活用論は、志位さんが大会報告を行ったけれども、けっして志位さん主導のものではなかった。よく知られているように、不破さんがテレビ討論会などを通じて、9条堅持ということだけでは、党や護憲派の間ではともかく、国民の中では通用しないと指摘し、直後の大会で打ち出したものだ。こういう決断は、個人の信条を優先する人には無理で、党の利益を優先させないとできない。

 

 率直に言って、志位さんは、乗り気ではないまま大会報告を行ったと思う。大会の準備過程でも、憲法学会では自衛権さえ否定するのが9条解釈の本流になりつつあるのに、なぜ活用論なのだと不満げだった。党首である不破さんの指導には逆らえないというところだっただろう。

 

 その結果、どうやったら自衛隊を活用しないで済むかみたいな工夫というか細工をするようになり、安保廃棄以前は活用しないという解釈が通るようなことになったのだ。活用しないという本音で活用するという決定を覆い尽くすやりかただ。それって、自衛隊の活用が必要な事態は、安保堅持の自民党政権では生じないのに、安保廃棄の共産党政権では生じるということになる。安保廃棄で自衛隊廃止に向かうことが共産党の展望なのに、論理的に成り立たないため、どこかで撤回する必要があった。

 

 しかし、今回、志位さんが党首である状態で、ウクライナ戦争が起きた。共産党への批判が殺到したのだろう。共産党のよいところは、そういう国民からの声は、批判も支持もすべて指導部にあがっていくシステムがあることだ。

 

 そうして、自分の信条よりも党の利益を考えないとダメな党首の志位さんは、22大会で決めた本来の自衛隊活用論しかないと腹をくくったのだと思う。ところが、ここが22年間のツケなのだけれど、現状ではまわりはそれに乗り気でない人ばかりなのだ。自分だって22年前はそういう一員だったのだしね。

 

 率直なところをいうと、もし現状で党員投票の党首選挙があったとして、もし絶対平和主義者、自衛隊即時解散論者が立候補したら、志位さんや私(立候補できる制度設計ができればだけど)を押しのけて圧勝すると思われるくらい、党内には自衛隊否定論が強い。

 

 民主集中制だから党首を助けてあげようと言っても、自衛隊活用論を積極的に創造的に発展させるために努力する人は、志位さんのまわりにはあまりいないだろう。私は、志位さんを擁護するために(というより共産党のために)、この22年間考えてきたことをまとめて、何らかのものを提起したいと思う。(了)