志位さんは自衛隊を活用すると言っている。あるいは、日米安保条約についても、日本が侵略されるようなことがあれば、第5条の発動はOKだと言っている。

 

 それなら、立憲民主党とあまり変わらないように見える。ところが、立憲民主党からは、共産党との安保・防衛政策との隔たりを指摘する声が聞こえる。それが政権共闘に踏み切れない原因だと言われる。

 

 立憲民主党だけではない。共産党の側からだって、自衛隊も安保条約を使うとまで踏み込んでいるのに、立憲との距離をこれで縮めたという声は聞かれてこない。最近配布されてきたリーフを見ても、意見の異なる問題は野党共闘には持ち込まないと書いている。自衛隊も安保も使うが、立憲などと政策は異なるというのが、共産党側の認識なのである。

 

 つまり、この問題での共産党の政策は、やはり安保条約廃棄と自衛隊解消だということである。安保と自衛隊を使うという言明は、政策という位置づけは与えられていないということだ。

 

 その結果が、現在の不評である。自衛隊活用論で党内や護憲派の評判を落とす一方、その言明を政策とまではみなさないため、野党からも評価されていない。評価する声がどこからも聞こえてこないのが現状である。

 

 ここを打開するためには、安保と自衛隊を活用すると言明した時代にふさわしく、「これが共産党の防衛政策だ」と国民に堂々と訴えられるものに発展させる必要がある。命も9条も守ると共産党は言っているが、文字通り、「この防衛政策なら国民の命を守れるよね」と胸を張って言えるし、「この道を進めばやがては日本の周辺は平和な状態が永続し、軍事力に頼らないでも済むようになるよね」と思えるような政策である。

 

 1994年に9条を将来にわたって堅持する立場に転換し、2000年に自衛隊活用論を決めたけれどその両者を統一させるような政策は深められてこなかった。この20数年の混迷をどう評価するかは別にして、共産党が「自衛隊は縮小」という数パーセントの国民に依拠するだけでなく、支持をそこから少しでも広げようとすれば、欠かすことのできない新しい挑戦である。

 

 共産党内にいるあまたの理論家も、現状では志位さんの発言を一字一句忠実に「赤旗」で再現するだけである。志位さんに任せるのではなく、どんどん自分の案を出してほしい。そうやって百家争鳴のような状態を作り出さないと、現状から抜け出すのは簡単ではないと思う。私も、数か月後には、共産党が採用すべき政策について、何らかのものを公表するつもりである。(続)