まず簡単な問題から。野党で連合政権を組み、共産党がその一翼を担って大臣でも出したような場合、共産党の閣僚は自衛隊違憲論を唱えられるかということだ。

 

 自衛隊が違憲か合憲かは党員や護憲派にとってはこだわりがある問題だから譲れない、別にそこは留保して政権を組めばいいではないかという立場がある。そこを譲ると、社会党の末路が待っているというわけである。

 

 しかし、そういうことは絶対にできない。簡単な問題で、いわゆる「閣内不統一」に陥り、内閣がもたなくなるのだ。

 

 これは憲法で言うと66条3項からくる問題である。そこでは、「内閣は、行政権の行使につ いて、国会に対し連帯して責任を負ふ」と書かれている。

 

 内閣には「連帯責任」がある。内閣のなかで自衛隊が合憲か違憲か分かれていては、予算の作成や執行、法律の実施などの「行政権の行使」もバラバラになって「連帯責任」を果たせない。だから、そんな内閣は無責任のそしりを免れず、内閣としてもたないのである。

 

 だからこれまでも(最近はあまり聞かなくなったが)、大臣の問題発言などがあると、総理大臣がその大臣を罷免することによって、閣内の統一を図ってきたわけである。そんなことにならないよう(不統一状態が生まれないよう)、総理大臣には大臣の任命権が与えられ、連帯責任が保たれるようにしているわけだ。

 

 つまり、例えば立憲民主党が総理大臣で政権が発足し、共産党の大臣が誕生したとすれば、国会の初日から共産党の大臣に対しては、「お前は自衛隊を合憲だと考えるか違憲だと考えるか」と追及がされる。そして、共産党の大臣はが「違憲だ」と答えれば、その場で国会は止まり、閣内不統一が解消されるまで国会は開かれない。そして、共産党の大臣は罷免されることになる。

 

 そうなることがすでに分かっているから、立憲の総理大臣は、最初から共産党を閣僚に入れようとはしない。いや、そもそも以上のような問題があるから、共産党がこれまでの違憲論を堅持したままでは、共産党をふくむ政権は何の現実味もないので、協力して政権をつくる気持さえ起きてこない。そこをリアルに見なければならない。

 

 だから、もし共産党が政権の一角を担おうというなら、どんなかたちが望ましいかは別にして、必ずどこかに自衛隊合憲論を取り入れなければならない。志位さんを批判している人たちは、もし野党で共闘して政権交代が必要だと考えているなら、この志位さんの苦しさを、少しは理解してあげなければならないと思う。

 

 それでもイヤだというなら、野党共闘とはきっぱりとおさらばし、共産党単独政権をめざすしかないだろう。自衛隊が違憲だから解消せよという国民世論を過半数に広げる日まで、政権は取りに行かないという選択をするのである。党員や支持者がどちらを選ぶのかの問題である。(続)