米軍基地問題に関する万国津梁会議の最終提言は、辺野古への新基地建設阻止と安全保障をどう両立させるかを打ち出したもので、是非、読んでほしい。「新たな安全保障環境下における沖縄の基地負担軽減に向けて」というタイトルで、沖縄県のサイトに全文がアップされている。

 

 

 読んでほしいと言ったが、最後まで読み終えるには、平和主義者は苦痛かもしれない。言葉も聞き慣れないわけだが、安全保障というもの軍事戦略というものが必要だという発想がこれまでなかったわけだから、その論理に付いていくのに苦労すると思う。

 

 この提言では、地位協定の問題が大きな位置を占めている。中公新書の『日米地位協定』を書いた琉球大学の山本章子さんが万国津梁会議の委員として参加しているのは、全国の米軍基地で演習が強化されているけれど、提言が受け入れられて辺野古への移設問題がなくなったら、そういう方向がさらに強まることが予想されるので、どうやったら米軍演習で住民の被害を押さえられるのか、いろんな自治体を回って経験を集めてきたからでもある。

 

 けれども、結局は、ここがカギなのだと感じる。沖縄の基地負担を軽減するということは、何らかのかたちで本土の基地負担が増すということである。それなしにアメリカが受け入れることはない。

 

 それなのに、沖縄の基地負担軽減を求める本土の世論は、そういうものとは異質である。旧革新側は、沖縄に不要なものは本土にも不要だということで、その土俵に乗ってくることはない。旧保守側は、抑止力に頼るというだけで、アメリカに逆らうことはしないので、沖縄の負担軽減を自分のこととして考えることはない。結局、安全保障のことを自分のこととして考えるということが、本土では確立していないのである。

 

 この連載で書いてきた「沖縄の事が本土で自分事となる道筋」。これが難しいのも結局はそこである。共産党の志位さんが22年ぶりに「自衛隊活用論」を復権させたけれど、党内からの猛反発もあって、なかなか苦労している。この22年間、自衛隊批判を続けてきたのだから、突然活用すると言われても付いていけないのだと思う。「沖縄の事が本土で自分事となる道筋」も、結局は、共産党員が自衛隊活用論を心から受け入れるときに達成するのかもしれない。いつになるのだろうか。(了)