はい、ちゃんと出版社の仕事もしています。ということで、書店向けに発行したチラシを紹介しておきます。

 

 『〈論争〉マルクスの「生産力」概念をめぐって』を7月に刊行予定です。昨年3月、聴濤弘さんの『マルクスの「生産力」概念を捉え直す』という本を出しましたが、これがマルクス主義陣営内部でかなり議論になりました。

 

 これは、マルクス『経済学批判 序言』の再検討したものです。ある社会構成体で生産力が発展していくと、その構成体の生産関係ではやっていけなくなって、新しい社会構成体に移行することになるのだという有名なテーゼの再検討です。

 

 これって、読み方次第では、資本主義の次の新しい社会に移行しようとすると、今よりもっと生産力が発展しなければならないことになって、経済成長を競い合うみたいになります。これだけSDGsが問題になる時代に、そういう解釈でいいのだろうかというのが、著者の問題提起な訳です。

 

 それに対して、マル経の宇野派の重鎮である柴垣和夫先生が「政経研究」誌上で書評を書かれ、聴濤さんが返答を同誌に寄稿しました。また、月刊誌「経済」の元編集長である友寄英隆さんとの間で、何通もの往復書簡を交わして論争しました。その他、いろいろ議論があります。

 

 マルクス主義と言えば、そもそも論争から始まった理論のようなものです。マルクスもエンゲルスも批判をたくさん書きましたし、戦前の講座派と労農派の論争も有名です。戦後もいろんな活発な論争がありました。

 

 ところが、ここ30年ほど、ほとんど論争らしい論争がありません。マルクス主義が発展して、全ての問題を解明尽くしたからというならいいのですが、全然そんなことはない。批判してはいけないみたいな状況が生まれている訳です。

 

 そんな時代にこれだけの論争が生まれて、意味があったと思います。聴濤さんの本は「赤旗」には広告が掲載されないので、今後もブログで紹介していきますね。