共産党が22年ぶりに自衛隊活用論を復活させ、いろいろ問題になっている。22年間も封印し、その間、「赤旗」等では一貫して自衛隊批判のキャンペーンを続けてきたわけだから、いまさら活用と言われても、という感じであろう。

 

 ただ、地方の現場では、身近に自衛隊が存在していて、これまでも自衛隊批判だけでは通用しない現実があった。だから、理念の世界で対応していれば済む中央委員会とは違って、住民の感覚と近いレベルでアプローチしたいという願望もあったわけだ。

 

 それが頂点に達したのが3.11である。全国の駐屯地から若い自衛官が東北に赴き、日夜全力で頑張っている様が報道される。だから、共産党の地方組織のなかでは、駐屯地を訪れ感謝したいと考えるところも出てくる。しかし、中央委員会にお伺いを立てると、直ちに却下されてきたのが、この間の現実であった。

 

 自衛隊活用論が息を吹き返して、そこは変わるのだろうか。22年前から一貫して自衛隊活用論だというのが現時点での説明だから、この22年間と同じ基準で対応せよというのが中央委員会の対応になるのだろうか。

 

 それを占うのが、那覇市議会で4月25日に採択された決議で、タイトルは「本土復帰50年に際し、市民・県民の生命を守る任務遂行に対する感謝決議」。沖縄は離島が多く、ただでさえ救急搬送で自衛隊にお世話になることも多いし、沖縄戦の不発弾処理も引き続き必要で、それに感謝する決議である。自民党が提案したが、立憲や社民が乗らないなかで採決へと事態が進み、共産党市議団は賛成する。しかし5月2日、市議団がこの対応に関して「反省」のコメントを発表したというものだ。コメント全文はここにある。

 

 

 自衛隊問題は護憲派には全国共通して難しい問題であるが、日本軍に自決を迫られた沖縄では特別に難しい。自衛隊を活かす会が沖縄でシンポをした際、現地メディアの幹部とも意見交換をしたが、米軍問題では一致する幹部の中でも、自衛隊をどう扱うかはまとまらず、難しいのでそもそも議論したくないという感じであった。

 

 だから逆に、護憲派が沖縄で自衛隊問題で何らかの一致点を見出せれば、全国的にも扱いにくい問題ではなくなる。「反省」コメントに中央委員会の関与があったかどうか知らないが、活用論を復活させた地点にふさわしく、沖縄で通用するような本格的な対応をお願いしたいものだ。

 

 その見地に立つと、このコメントはなかなか興味深い。一部で、4月25日に賛成したのを「撤回した」と評されているが、どこにも「撤回」の文字は見えない。冒頭に、「患輸送活動等を連携して担っておられる関係者に深い敬意と感謝を表します」とあり、市議団が賛成したことに対して、「住民の生命を守る活動に敬意と感謝を表するのは当然で評価するとの声とともに」「懸念も寄せられている」としている。両方の評価を並列させているのだ。

 

 その上で、「党市議団の急患空輸活動の敬意と感謝の思いに反して、自衛隊の増強等に利用されかねない問題点が内包していることを思料すれば、党市議団の対応を真摯に反省するものである」という結論である。なかなか慎重な物言いである。

 

 しかも、そのすぐ後に、参考資料として2121年衆議院選挙政策が掲げられている。

 「かなりの長期間にわたって、自衛隊と共存する期間がつづきますが、この期間に、急迫不正の主権侵害や大規模災害の発生など、必要に迫られた場合には、自衛隊を活用することも含めて、あらゆる手段を使って国民の命を守ります」

 

 地方から中央に対して、「これでいいのか」と問いかけているようだ。