19世紀には交戦国への武器援助は中立から逸脱し、参戦する行為と見做された。しかし、20世紀になって変化が生まれる。

 

 前回の記事で、アメリカが1935年に中立法を制定したことを紹介したが、第2次大戦が開始されると、そのアメリカ政府が、参戦したいという希望と厭戦の国民世論の間で揺れ動き、参戦しないが武器を援助するという手段にでたのである(現在のウクライナへの武器援助のようなものだ)。それが1939年5月の中立法の改正であり、40年になるとイギリスに対して旧式駆逐艦を送ったりしたのである。

 

 しかし、どの歴史の年表をみても、アメリカの参戦は真珠湾攻撃の後となっている。ただしこれは、武器の援助などの実態ではなく開戦の宣言のような形式を重視するというよりも、巨大なアメリカを敵に回したくないということで、ドイツなども武器援助を口実にアメリカを攻撃するようなことはしかなった、というのが正しい見方かもしれない。

 

 第二次大戦を踏まえて国連憲章の時代になった現在、どんな行為を持って参戦と見なすかという、国際法上の規定はない。けれども、「こういうことをどこかの国にやられれば自衛権を発動して武力を行使して良い」と考えられる国際標準の考え方がある。それが侵略の定義」と題される1973年の国連総会の決議である。

 

 ここではまず、誰もが「これは武力攻撃だよね」と思わせる5つの行為が列挙される。代表的なものでは、「a、一国の軍隊による他国の領域に対する侵略若しくは攻撃、……軍事占領、……全部若しくは一部の併合」、「b、一国の軍隊による他国の領域に対する砲爆撃……」「c、一国の軍隊による他国の港又は沿岸の封鎖」「d、一国の軍隊による他国の陸軍、海軍若しくは空軍又は船隊若しくは航空隊に関する攻撃」などである。

 

 こういう自ら攻撃するというだけのものではない。「f、他国の使用に供した領域を、当該他国が第三国に対する侵略行為を行うために使用することを許容する国家の行為」もある。これは、侵略のために基地を貸したら、貸した国も侵略したのと同じだという意味である。伝統的な国際法の考え方が、ここには反映している。

 

 この「侵略の定義」では、武器の援助が武力攻撃に当たるという考え方は示されていない。関係するとしたら、最後の以下の規定だけである。

 

 「g、上記の諸行為に相当する重大性を有する武力行為を他国に対して実行する武装した集団、団体、不正規兵又は傭兵の国家による若しくは国家のための派遣、又はかかる行為に対する国家の実質的関与」

 

 要するに、他国を占領したり、爆撃したり、基地を提供したりするのに「相当する重大性を有する武力行為」をしたら、それも同じだよねという意味である。武器の援助は明示的に含まれてはいないが、「相当する重大性を有する武力行為」と見做されるかどうかが、それを判断するメルクマールになるということではあろう。(続)