最近の自民党を見ると、どんどん日本が前線へと向かう動きを加速しているようだ。敵基地攻撃もその一つである。

 

 なぜこんなことになるのかと言えば、直接的にはウクライナ侵攻があって、それを利用して軍拡を進めるという側面はあろう。しかし、自民党の中でもよく考えている人は、今回の問題を通じてアメリカの抑止力には頼れないという判断を強め、だから自分で反撃能力を持つしかないという人もいると思う。

 

 だって、これまで敵基地攻撃は、アメリカの役割だったのだ。しかし、アメリカは相手が核保有国だったら戦争はしないことを、今回の問題を通じて我々は学んだのだ。以前なら、日本が自前でそんなシステムに金をかけるのではなく、アメリカの核兵器で一網打尽にすればいいのだ、だからアメリカの核抑止力に頼るのだという回答があったのだが、それが通用しなくなったということである。

 

 左翼も平和運動も、アメリカには頼らない、とりわけ核兵器には頼らないと思っていることだろう。それならなおのこと、これまで敵基地攻撃に絶対反対という態度をとっていた人も、新しいアプローチを取るべきかどうか考える時にきている。

 

 ウクライナがミサイル巡洋艦のモスクワを撃沈したのも、日本で考える材料である。だって、あれは旗艦であって、指揮機能の中心だった。自民党の提言では、敵のミサイル基地だけでなく指揮機能を叩くことも検討対象になっているが、ウクライナの反撃はそういうものだったのである。まさか、ウクライナによるネプチューンの発射とモスクワ撃沈について、「あれは先制攻撃だ。日本では憲法違反だ」と言う人は少ないのではないか。

 

 自衛隊も現在、ネプチューンと似た装備を有している。「12式地対艦誘導弾」であり、ネプチューン(300キロ)より射程は短い(200キロ)。これを射程900キロの延長させ、最終的には1500キロまで伸ばそうと言うのが政府の計画である。それに賛成するのか反対するのかも問われてくる。

 

 いずれにせよ、私の基本的な回答は、すでに述べたように、冒頭の問いには「賛成」するが、その政策を現実のものにするだけの合理性はないというものだ。そこは腹を括って、「専守防衛」の旗を守り抜きつつ、相手にミサイルを撃たせないための努力に徹すべきだというものである。

 

 しかし、「12式地対艦誘導弾」の射程が伸びれば、沖縄や南西諸島に配備するのではなく、本土に置いておくという選択肢も生まれる。中国や北朝鮮の面前に配備して刺激しないということも、今回のウクライナ問題から導き出せる教訓である。選択肢として考えておくべきものではあるだろう。(了)