ウクライナの戦いぶりを見ていると、「専守防衛」を実地でやっているような感じである。あくまで自国領土にとどまり、侵攻してきたロシア軍を叩くやり方である。実際問題として、ロシアの領土まで出かけて行って新たに戦線を拓くような軍事能力は、ウクライナは保持していないだろうけれど。

 

 いつだったか、国境のロシア側にある石油施設が燃え上がり、ロシアが非難をしてウクライナは自分達がやったことではないと弁明していた。国境を超えて侵略している連中が、どの口でそんな非難をできるのだと思ったが、例えウクライナ側の行為の結果だったとしても、ほぼ専守防衛の枠内で戦っている事実に変わりはない。

 

 問題はロシアのミサイルにどう対処するかである。ロシアが東部に軍隊を集中させることで、キーウ周辺からは引き上げたようだが、ロシアは東部の制圧に全力を挙げつつも、キーウなどにミサイルを撃ち込み始めた。そちらのことも忘れていないよ、いざとなったら攻めるよと示すことで、ウクライナ軍が東部に力を振り向けることを牽制する狙いがあるのだろう。占領するつもりはなくても、ミサイルはこうやって使われることがある。

 

 現在、ウクライナの側は、ロシアのミサイル攻撃に対しては、やられるがままである。領土に侵入してきた戦車は躊躇せずに破壊しているが、少なくともロシアの短射程のミサイルを防衛するシステムは保有していないのだろう。

 

 では、もしウクライナ側が、ミサイルは撃ち落とせないから、ミサイルの発射基地を叩こうとしたら、それは専守防衛から外れるのだろうか。それ以外にミサイルの被害を減らし、なくす手段はないから叩くのだと表明しても、これは自衛とは呼べないのだろうか。あるいは、侵略とは呼べないまでも、あまり誉められた手段ではないのだろうか。

 

 もっと難しい事例がある。巡洋艦モスクワのことだ。あれはミサイル巡洋艦であって、搭載された防空ミサイルは、ウクライナ側の航空機の運用を妨げていた。

 

 防衛省などの資料を見ると、巡洋艦モスクワが沈没したのはオデーサの南、およそ110キロの海上だと言われる。黒海の領有権は複雑みたいだが、国連海洋法条約で領海は12海里(約22.2キロ)とされているので、少なくともウクライナの領海にいる状態で反撃し、沈めさせたのではない。

 

 先日の自民党の提言は、「この機に乗じて」という感じの不真面目なものだった。あまり政治的に敏感な人がつくったのではなく、だからこのようなウクライナの被害を挙げるわけでもなく、ウクライナの事態を真剣に心配していることは伝わってこなかった。

 

 けれども、自民党のことだから、本気になったらやってくる。その場合に、護憲派は、私がいま書いているようなウクライナが被っているミサイル攻撃をどう捉えるのか、何を訴えるのか、真剣に考えておかなければならない。(続)