これは「ウクライナ危機に関する覚書」の3にあたるものだが、いまテレビで議論されたホットな話題なので、独自のタイトルをつけてみた。羽鳥慎一モーニングショーの議論である。

 

 以前からコメンテーターの玉川徹さんがウクライナ側に妥協というか降伏のようなものを求めていることは報じられていたが、初めて直接に耳にした。本当なんだね。

 

 玉川さんの根拠は、自衛であれなんであれ戦争は回避しないとダメだというものだった。人の命がいちばんということだろう。ロシアが侵略している側だということは認め、批判しつつも、ウクライナ側にも回避するための手段があったはずなのに、その手段を取らなかったという論理だった。ミンスク合意を守らなかったとか。

 

 番組では、同じような事態に直面した経験のあるジョージアの大使が出演していて、玉川さんはジョージアは領土が奪われても妥協し、合意を守っているので戦争になっていないことを強調していた。まあ、確かに、そういう要素は紛争にはつきものという面はある。

 

 けれども、大事だと思ったのは、別のコメンテーターが大使に、妥協するにしてもウクライナ側にとって譲れないものは何かと聞いたことに対し、大使が語った言葉である。大使ははっきりと「独立と自由だ」と答えていた。

 

 「独立と自由ほど尊いものはない」。これは私より以前の世代には忘れられない言葉である。ホーチミンの言葉だ。

 

 ベトナムにとって、「平和」が第一という選択をすれば、独立戦争をしないという選択肢は存在した。いや、ベトナムに限らず、旧植民地諸国は全てそういう問題に直面していた。

 

 玉川さんのような平和主義者にとっては、「独立と自由」より「平和」ということなのかもしれないが、独立と自由を犯される人にとっては、戦争に訴えてでも、命を失っても独立と自由を望む気持ちになることは忘れてはならない。ましてや、「独立と自由」を大事にする国家指導者の選択を間違ったものと批判してはならないと感じる。

 

 ミンスク合意の問題も、合意だから尊重しなければならないという面がある一方で、しかし民主主義国家において合意に批判的な国民世論が形成されたとき、どう対応すべきかという面もある。フィンランドなどでもNATO加盟の世論が高まっていることが報道されていて、そんなことをすればまたロシアを刺激するという批判もあるけれど、同時に、誰がみてもロシアの脅威から逃れるためにそういう選択を国民がするのは仕方がないよねという問題もある。

 

 要するに「戦争はダメ」「平和がいちばん」というだけで物事を判断してはならないということである。難しい問題ではあるけれど。