「ウクライナ危機下で9条護憲をどう訴えるか」の連載は継続中だが、ウクライナ問題の進展は複雑で、連載に入りきらない分野の問題も少なくない。そこで、その連載では書かない問題は、ここで言及しておきたい。

 

 昨日(3月24日)、国連緊急特別総会で、ウクライナの人道状況改善を求める決議が採択された。賛成140、反対5、棄権38だったが、先日(3.3)のロシア非難決議が賛成141、反対5、棄権35だったから、ロシア非難の国際世論が確固としたものとして示されたと感じる。

 

 反対と棄権の合計が40くらいと、賛成の3分の1近くあるので、圧倒的なものだと言えないという人もいるかもしれないが、例えば、2014年にロシアがクリミアに侵略し、併合した際、その併合を認めない国連総会決議が採択されたけれども、これは賛成100、反対11、棄権58だったのだから、格段の違いがある。

 

 侵略に対して国連総会が意思を示すのは当然だと思っている人も少なくないだろうけれど、これは1980年代に入ってからの現象なのである。あのベトナム戦争の時も、アメリカの侵略が十数年にわたって続いたのだが、国連総会で議題となることはなく、アメリカを批判するために登壇する国もなかった。当時の安保理常任理事国と普通の加盟国との間には、圧倒的な力の違いがあったのだ。

 

 これを覆したのが、1979年12月のソ連のアフガン介入であった。翌年1月の国連総会で、ソ連軍の撤退を求める決議が賛成104、反対18、棄権18で可決される。さらに1983年、アメリカがグレナダに介入した際、それを批判する決議が賛成108、反対9、棄権27で可決された。今回のロシア批判決議に賛成が140もあったのは、これらと比べてもすごいことだと思う。

 

 しかし、このどちらの決議も、軍事介入の当事者であるソ連、アメリカを名指しせず、起きている事態が国連憲章と国際法に違反するとして、「外国軍隊の撤退を求める」ものだった。まだまだ大国を名指しする力はなかったのだ。

 

 けれども1986年、アメリカがリビアをテロ国家として爆撃した際、国連史上初めて、総会はアメリカを名指しで批判する決議を採択する。そういう経過を辿ったので、当時、世界の平和と安全の問題では、機能しない安保理に代わって、国連総会が何らかの役割を果たすことになるのではないかという期待が高まった。

 

 しかし、そこまでだった。国連総会は大事な問題で役割を果たせず、存在感のないものになっていく。(続)