(9条の会、新日本婦人の会、平和ネット3.5講演会の記録)

 3、改憲政党の国会議席はすでに9割を超えている

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 昨年末の総選挙の結果、自民党が議席の減少を最小限度に止めたのに加え、改憲をかかげる維新や国民民主党が大幅に議席を伸ばしました。その結果をうけて、国会では衆参とも改憲勢力が3分の2を超えたとか、いや4分の3だとかという議論が起こりました。危機感や不安感を抱く護憲派も少なくないでしょう。

 

 しかし現在、どの政党が改憲派でどの政党が護憲派かというのは、あまり意味を持っていないように思えます。例えば3分の2論にせよ4分の3論にせよ、立憲民主党は護憲政党だという認識が前提になっていますが、これ自体が正確ではありません。

 

 総選挙にあたり、憲法9条に対してどういう態度をとるかを、いろんな団体が候補者にアンケートをとりました。現在の立憲民主党の党首である泉健太さんは、京都3区野党の統一候補としてみなさん方の中にも投票した人がいると思いますが、「改正して、自衛隊の役割や限界を明記すべきだ」と明確に改正の立場を表明しています。

 

 このアンケートの結果をふまえ「護憲」側に括られたのが、当時の代表である枝野幸男さんでしたが、たしかに「憲法9条の改悪に反対」と答えています。しかし、正確に引用すれば、枝野さんは「安保法制を前提とした憲法9条の改悪に反対」と回答しているのです。2015年の安保法制の違憲部分が撤回されれば、9条の改憲議論をいとわない立場だと言えます。

 

 ご存じかどうか知りませんが、枝野さんは2013年に『文藝春秋』に「憲法9条 私ならこう変える 改憲私案発表」と題する論文を好評しました。当時の「赤旗」は、長大な論文を掲載し、「改憲政党としての民主党の性格をあらわにするもの」と厳しく批判しています(9月10日付)。

 

 こうして見ると、どんなものであれ憲法9条には手を付けないとする国会議員は、おそらく共産党と立憲のごく一部だけでしょう。国会議員の9割は条件付きで改憲容認だと思われます。また、絶対に手を付けないのが護憲ということになれば、共産党だって天皇制の規定の問題がありますから、絶対主義的な護憲とは言えないのです。

 

 大事なことは、絶対に手を付けるなとか付けるべきだとか、そういう表面的なところにはありません。改憲問題をめぐる対決の構図を正確に理解することです。

 

 もし、護憲という概念を、自衛隊を否定する立場だと捉えれば、先ほど述べたように、国会議員の1割どころか数パーセントに低い数字になるでしょう。護憲派にはほとんど仲間がいないという現実に直面してしまう。

 

 しかし、専守防衛のための自衛隊を肯定する人々も仲間なんだという立場に立てば、仲間はいっきょに増えていきます。集団的自衛権が無条件にいいものだという国会議員はそんなにいないのですから。

 

 そうすれば次の問題は、そう考えているけれど改憲だという人を、どう説得するかという問題になります。ここに頭を使えばいい。こういう人々は、「自衛隊=悪」論では納得しません。反発を強めるだけです。ウクライナ危機で、国民の多くは従来以上に「やはり自衛隊は必要だ」と感じているのであって、よけいに自衛隊否定論は通用しません。

 

 けれども、攻め方が理解できれば、あとは頭の使い方です。それに加え、仲間にするにふさわしいリスペクトです。専守防衛を唱える人々へのリスペクトの気持を持てるかです。そこがないと、心が通い合わないので、仲間になってくれないと思われます。(続)