ウクライナに行ったことはないが、若い頃、まだソ連が社会主義だった時代、トランジットでキエフの空港には降り立った。そこから見える場所に軍の拠点でも置かれていたのか、空港建物内ではソ連軍人による監視が行われていて、写真撮影もちゅうちょするほどであったことを記憶している。当時から、ソ連にとって、軍事的に手放せない場所ということだったのだろう。

 

 それにしても、恥ずかしいことだが、まさかロシアがこんな大規模な侵略をするだなんて、ほとんど想像もしていなかった。東部の一部を国家承認し、平和維持軍を派遣すると言ったときは、もちろんそれも侵略に変わりはないにしても、狙いは国境地帯での安全確保か、それならこれで終わるのかと思ったほどだ。それがキエフも含む全面侵略だとは。

 

 率直に言って、世界に与える影響は大きい。あまりにも大きい。たとえ世界経済が深刻な打撃を受けることになっても、そこは堪え忍ばないと、侵略が横行する暗黒の世界に逆戻りしかねないだろう。

 

 日本にとって大事な教訓は、やはり自国は自国の責任で守らないとダメだということだと思う。ウクライナがあれほどNATO加盟を切望していたのに、バイデンさんなど、最初からウクライナに兵力を送るつもりはないと断言していた。ロシアはそこを見切ったということだ。

 

 ロシアがやっていることに比べれば、誰も住んでいない小さな島(尖閣)を取りに来るのなんて、きわめて小さなことになってしまう。台湾の武力解放だって、ロシアがやったことと比べれば、一国の国内問題だという弁解のほうがマシに見えてしまう。

 

 大事なことは、この経過のなかで、ロシアが軍事侵攻を口にした時点で誰もがそれを批判したけれど、アメリカが周辺諸国に部隊を派遣したりするのを批判する人はほとんどいなかったことだ。当たり前だよね。だって、現実に侵略しているのはロシアなのだから。

 

 ところが、同じように、中国が台湾を武力解放する方針を持っているのに、それを批判する左翼、平和運動はほとんど存在しない。そして、その台湾有事に備えて軍事的対応を準備する米軍、自衛隊をもっぱら批判している。

 

 ロシアの侵攻で逃げ惑う人々を映像で見ながら、NATOを批判する人はいない。中国の侵攻で傷つく台湾の人々の映像を見ながら、左翼が中国ではなく米軍や自衛隊ばかりを批判するとしたら、壊滅的な打撃を被るよね。きっと。