2004年の第23回党大会での綱領改定は、中国を社会主義だと位置づけたとう点で、いまでは怨嗟の的になっている。党員がこの規定のせいでどんなに苦しんだことか。

 

 ただ、ここで改定された綱領は、このブログ記事が主題にしている問題では、きわめて大きな意味を持っている。何かというと「アメリカ帝国主義論」の転換である。

 

 共産党に通じている人なら知っているように、共産党は1961年に採択した綱領以来、長く日本革命にとっての「2つの敵」論をとってきた。アメリカ帝国主義と日本独占資本という2つの敵を倒してこそ、ようやく民主主義革命が達成されるというものである(社会主義はその次の段階)。

 

 61綱領では、最初から「アメリカ帝国主義」という用語が出てきていて、それが日本人民の敵であることは、説明不要の原理のような位置づけであった。60年安保闘争を闘った時代の雰囲気が強く漂っている。そして、この見地からして、アメリカ帝国主義が日本を支配する道具である日米安保条約の即時廃棄も、自明の原理的課題だったのである。

 

 しかし、2014年の綱領では、最初からずっと「アメリカ」とか「アメリカ政府」という言葉で説明されていて、最後のほうになり、アメリカの覇権主義の政策や行動の事実を連ねたあとでようやく「アメリカ帝国主義」という用語が使われる。これはじつは、アメリカが帝国主義とは言えなくなることを想定しての転換である。

 

 この大会で綱領改定について報告を行った不破さんは、まずこう述べている。

 

 「政党が、ある国を『帝国主義』と呼ぶときには、その呼称・呼び名には、侵略的な政策をとり、帝国主義的な行為をおこなっていることにたいする批判と告発が、当然の内容として必ずふくまれているということであります。

 そこから、改定案は、植民地支配が原則的に許されない現在の国際秩序のもとで、ある国を『帝国主義』と呼ぶためには、その国が経済的に独占資本主義の国だというにとどまらず、その国の政策と行動に、侵略性が体系的に現れているかどうかを基準にすべきだ、という立場をとりました。」

 

 それまでマルクス主義者にとっては、レーニンの『帝国主義論』がすべてであった。この本でレーニンは、経済的に独占資本主義段階に到達した国を「帝国主義」と呼び、先発の帝国主義国が植民地を広げ、後発の帝国主義国がそれを奪いとろうとし、世界規模の戦争が起こるのだと断言したのである。独占資本主義国は、先発であれ後発であれ、すべて戦争する国家というわけであった。

 

 その規定がその後の世界の共産党を支配していた。だから、日本の共産党にとっても、ヨーロッパの発達した資本主義は帝国主義だったし、アメリカにいたっては証明不要の帝国主義だった。そして帝国主義とは、覇権主義と軍事力で世界を支配する敵であり、当然のこととして打倒の対象だったのだ。

 

 それが、独占資本主義段階だからといって帝国主義と言うわけではないと転換したのである。これは、アメリカだって覇権主義と軍事力で世界を支配するようなことをやめれば、もはや帝国主義ではないということである。日本革命にとっても敵ではなくなるということを意味している。長くなるので、続きは次回。(続)