そして第5の弱腰。事ここにいたっても、安倍さんは後ろに隠れていて、岸田さんを前面に立てようとしている。

 

 昨日書いたような経過があるから、岸田さんも林外相も、明治の産業革命遺産問題でのユネスコの勧告にちゃんと対応できない限り、佐渡金山の登録が認められないことは分かっている。だからずっと、すぐに申請することをためらい、「どうやったら登録が実現するのかが大事だ」と言い続けてきたのである。産業遺産情報センターの展示内容を追加することについて、安倍さんらへの根回しもしようと思ったのだろう。

 

 ところが、そういうこととは関係なく、安倍さんが右派議員を総動員して岸田さんに圧力をかけ、締め切り間際に登録申請を出させた。それがこの間の経緯である。

 

 結局安倍さんは、自分が前に出て、韓国の政府や議員や国民世論を説得するようなことは、これまでただの一度もやっていない。そんな能力に欠けているのだろう。だから、それは他人にやらせて、自分は安全な後方にいて、仲間と「歴史戦を戦うぞ」と吠えているだけなのである。

 

 自分が総理大臣の時に対応したことが問題を生み出しているのに、この人には「責任」という感覚が欠落しているようだ。そんな安倍さんを信頼し、褒め称え、「歴史戦」をともに戦おうとしている仲間のみなさん、本当に大丈夫ですか。安倍さんは、自分で責任をとらないことははっきりしていて、仲間のみなさんに責任をとらせるんですよ。結局のところはね。

 

 まあ、私は、安倍さんが首相だった2015年、慰安婦問題で韓国と合意をつくったことはすごく評価しているのだ。この時、出された談話の内容は河野談話と同じ水準だったけれど、日本が全額を税金で支出して財団を運営するという点で、河野談話の水準をはるかに超えるものだった。それだけの水準のものを、文在寅大統領がゴミのように扱ったのには、非常に腹が立っている。

 

 この合意はきっと、岸田外相と外務省の合作だったのだろうけれど、それが破綻したことで、安倍さんは岸田さんに怨みでも持っていて、今回の対応になっているのかもしれない。

 

 しかし、何回も言うけれど、これは安倍さんの責任で生まれた問題であって、安倍さんの責任で解決しなければならない問題である。まだ言い足りないことがあるので、あと2回続ける。(続)