安倍さんの弱腰の3つ目は、昨日書いたことと関連するが、「歴史戦」の相手である韓国とは正面から闘わないのに、仲間内だけでは「戦った」かのように装うことである。仲間内でしか通用しないことだけど。

 

 それを象徴するのが、「産業遺産情報センター」だ。見学すれば分かることだが、全体として、登録された遺産を評価し、賛美するものである。それはいいのだ。だって、優れた遺産だとしてユネスコに登録されるのだから、展示内容の多くも当然そうなるだろう。

 

 しかし、昨日書いたように、展示にあたっては、朝鮮人労働者が「その意思に反して連れて来られ,厳しい環境の下で働かされた」ことを、「理解できるような措置を講じる」とされたのだ。それがユネスコへの約束なのである。そして実際、このユネスコでの日本政府の発言は、センターの入り口に掲げられている。

 

 ところが、「その意思に反して連れて来られ」たことを、「理解できるような措置を講じる」ための展示物はどれなのかと説明員聞いても、誰も何も説明できない。どこにも展示されていないから、説明員を責めても仕方ないのだけれど。

 

 軍艦島の展示のところは、朝鮮人も生き生きと働いていたという展示ばかりである。そういうものだってあってもいいのだ。どんな人だって、生き生きとする局面はあるし、逆に日本人労働者だって辛いことはあっただろうし、朝鮮人を差別しなかった日本人労働者もいただろうし、積極面を描くのは問題がない。しかし、ユネスコへの約束は果たされていない。

 

 これは私の推測だが、安倍さんは最初から、ユネスコの場では妥協するけれど、それで登録が決まれば勝ちだ、あとは勝手にやろうと思っていたのではないか。戦うべき相手とは戦わないで妥協しておきながら、国内の仲間には「歴史戦に勝ったぞ」と喜ばれるようにセンターをつくればいいと決めていたのではないか。

 

 そうでないと、この約束不履行は説明できない。そんな水準の安倍さんを右翼がいまだに持ち上げているとすると、右翼の将来も危うい。(続)