中国の人権問題を何とか動かすため、私がまず必要だと考えるのは、昨日少し言及した国連人権理事会の場において、中国を「特別手続」の対象国にすることだ。それを人権理事会の合意にするほどの努力をすることだ。

 

 日本で拉致問題に関心のある人なら、国連人権理事会が毎年、北朝鮮の人権状況を批判する決議を採択し、「特別報告者」を設置し、その報告者が人権状況を調査し、報告書を提出していることをご存じだろう。それと同じことを中国を対象にして行うことが大事だと私は考えている。

 

 これは世界の人権NGOが要求していることでもある。昨年、世界の300近いNGOが、グテーレス国連事務総長にそれを求める書簡を提出した。そこでは、以下のように述べられている。

 

 「私たちは、中国政府による様々な人権侵害を検証・評価するための国連の特別会合の開催、そして、この問題についてしっかり監視・分析し、毎年報告を行う公平かつ独立した国連のメカニズムの設置という国連専門家の呼びかけを支持します」

 現状では、これはほぼ絶望的である。昨日書いたように、国連人権理事会の場においては、中国の人権状況を批判する国より、それを擁護する国のほうが圧倒的に多いのである。

 

 しかし、安全保障理事会と違って、人権理事会に参加する国には拒否権はない。だから、世界の多数の国の賛成を得るだけのことを成し遂げれば、特別手続の対象国となるのである。実際、先ほどの北朝鮮だけでなく、ミャンマーなど10か国がこの対象国となっている。

 

 この制度は、連載でも取り上げた1967年に開始されたものである。人権状況が良くない国を徹底的に調査し、毎年報告書を提出していくのである。実際に該当する国には入れない場合が多いが(お前の国は悪いと言われて入国を許可する国はない)、特別報告者が設置されることで、その国の人権状況に関するいろいろな事実資料が集まってくる。その積み重ねが、その国の人権状況の改善の必要性を浮き彫りにしていく。

 

 対象とされるのは多くが開発途上国であるため、「いけにえになるようなもの」との批判が強く、人権委員会の時代と比べると、ずいぶん対象国は減った(その代わり、世界のすべての国を対象とした調査という新しいやり方が開始され、日本なども批判の対象にされることが増えてきた)。

 

 中国をこの対象とするくらいの世界規模の合意をつくらないと、率直に言って中国を恐れさせるようなものにはならない。そんな努力もしないで、ただ「外交ボイコット」だと騒ぐだけでは、昨日も書いたようにただの自己陶酔でしかないのだ。(続)