私は、台湾海峡問題で一番大事なことは、絶対に戦争を起こさないことだと考えています。これは多くの人が一致できることでしょう。

 

 アメリカや中国も戦争を望んでいるわけではありません。問題が平和的に解決するのが望ましいことは、両国とも繰り返し主張しています。

 

 ただし、この両国が「絶対に戦争を起こさない」と考えているかというと、そうではありません。中国が台湾独立勢力の策動や外部からの干渉に対しては武力行使の方針を排除しないのも、その象徴的な表れです。アメリカが台湾海峡における武力紛争を想定した軍事面での準備を進めているのも、中国が武力行使をすれば失敗することを伝えることで、そのような行動を抑え止めよう(まさに抑止です)とする意図からきたものでしょうが、抑止が破綻して戦争になる場合もあり得ることを承知で準備するのがアメリカであって(抑止力を強化すれば戦争にならないと考えるのが日本の指導者ですが)、アメリカもいざという時には戦争を厭わないと思います。

 

 日本の右翼も(桜井よしこさんがどうかは知りませんが)、このアメリカの基本姿勢を支持しています。アメリカのインド太平洋軍の司令官が3月に米議会で証言し、中国が6年後に武力行使に踏み切る可能性が高く、米本土から来援が来るまでの間、自衛隊に戦ってほしいと述べましたが、それを報じた「産経新聞」からは、アメリカにそこまで頼りにされている「誇り」のようなものがビンビンと伝わってくるほどでした。

 

 台湾有事が実際に発生するのか、発生するとしていつ頃になるのかについては、楽観的なものから悲観的なものなで、さまざまな見方があります。私も自分なりの見通しを持っています。

 

 ただ、一つ確実に言えることは、台湾問題での当事者の基本的な姿勢が変わらない限り、戦争の火種は残り続けることです。その基本姿勢とは、一つには、いざという時には武力行使を辞さないという中国の姿勢であり、もう一つは、「一つの中国」を拒否する台湾の姿勢のことです。あとで述べるように、武力行使を辞さない中国の姿勢も、「一つの中国」を拒否する台湾の姿勢も、どちらも日増しに強まっており、火種はどんどん大きなものとなっていて、看過することができません。

 

 この状態が嵩じて戦争が現実のものとなれば、中国と台湾はもとより日本の国民と国土も目を覆うような惨害に見舞われることは火を見るよりも明らかです。従って、日本の平和・市民運動がめざすべきは、冒頭に述べたように、「絶対に戦争を起こさない」ことしかありません。私が9条の会でお話ししたことは、たとえ中国を批判するものであっても、そういう立場からのものであり、同じく中国を批判するにしても、中国との戦争の際の日本の役割に胸が躍っている右翼とは根本的に異なっていると思うのですが、いかがでしょうか。

 

 では、どうやったら絶対に戦争が起きない状態を作り出せるのか。次にその問題を検討したいと思います。(続)